「新選組刃義抄 アサギ」第7巻 新選組の中の陰と陽
「新選組刃義抄 アサギ」も、気がつけば結構な長期連載となり、今回第7巻が刊行されました。
姉小路公知暗殺事件の衝撃が、この巻では様々な人々に波及していくのですが…いやはや一筋縄ではいかない展開であります。
この「新選組刃義抄 アサギ」、原作は時代考証家の山村竜也ということで、堅めの内容を想像されるかもしれません。
しかし従来の新選組像を踏まえつつ、意表を突いた展開を用意してくるのが本作の最大の魅力であり、それはこの巻でも変わることはありません。
第6巻のラストで暗殺された姉小路公知。史実ではその現場に薩摩の人斬り・田中新兵衛の刀が残されていたことから、彼が犯人として疑われるわけですが…
しかし、本作においては、そこに桂小五郎と、彼と繋がった斎藤一が絡んでいた、という設定。
第6巻では、その斎藤と土方が対峙した場面から一転、公知が亡骸となっている場面に繋がったため、一体その間に何があったのだ!? と大いに驚かされたのですが、この巻の冒頭で明かされる真実は、さらにこちらの度肝を抜くものであります。
なるほど、確かにこの流れ、この人物配置であればあり得ないわけではありませんが、しかしこの展開は本当に予想できなかった!
なるほど、この時の繋がりが後にああなってこうなって…と驚いたり感心したり、であります。
そしてまた、ここでの土方の選択が、新選組に――試衛館組の中にも――大きな波乱を巻き起こすというのが面白い。
冷徹なイメージの強い土方ではありますが、本作の土方像は、それを踏まえつつもそこに止まらない、陰陽半ばしたものなのに感心させられます。
そしてこの陰と陽の存在は、本作の登場人物ほとんどに共通するものであります。
沖田も、藤堂も、斎藤も、以蔵や新兵衛も…決して善や悪といった一つの側に偏った存在ではなく、等身大の人間として、様々な側面を持つ。
その人物像が、そしてそれが物語にもたらすゆらぎが、本作を先の読めない、それでいて見事に王道の新選組物語たらしめているのだと、改めて感じました。
しかしながら、メインキャラクターの中で、陰陽がくっきり分かれた人物が少なくとも二人います。
一人は、これ以上ない形で陰と陽がくっきり分かれた芹沢鴨。そしてもう一人は存在自体が陰のみとも言える佐伯又三郎――
最近は陽の側ばかりが登場していた芹沢に、彼にとってはファム・ファタールと言うべきお梅の登場でゆらぎが見えてきたのも気になるところですが、何と言ってもこの巻の後半も持って行った感があるのは佐伯の外道っぷりでしょう。
新選組ファンにはよく知られた佐々木愛次郎のドラマを絡めて描かれる佐伯の姿は、まさにド外道というほかない代物。
正直なところ、これまでもこいつの存在には何度も胸が悪くなってきたものですが、今回は本当にひどい(本当、読者減ったんじゃないかしらん)。
この巻のラストシーンを見ると、今後の展開も予想できなくもありませんが、それが大いに楽しみ…と言ってもこの場合は許されるでしょう。
陰陽半ばした新選組物語の中の、陰の陰とも言うべき存在たる彼が、どのような運命を辿るのか――ある意味一つのクライマックス、というのは言い過ぎでしょうか。
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