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2012.02.19

「ちょんまげ、ばさら ぽんぽこ もののけ江戸語り」 実は実はの大伝奇

 江戸に次々と現れる戦国武将の亡霊たち。風魔小太郎により江戸を守る四神の封印が解かれ、地獄から亡霊たちが甦ったのだ。自分の祖父・相馬二郎三郎との因縁から、自分も亡霊たちに命を狙われる羽目になり、やむなく江戸を守るために戦う小次郎だが、事件の陰には、彼も良く知る者の姿が…

 戦国時代に「ちょんまげ、ちょうだい」の異名で恐れられた男の孫・相馬小次郎と、見かけは美少女、中身は天然の半妖狸のぽんぽこ――おかしなコンビが江戸の怪事件に挑む「ちょんまげ、ちょうだい」シリーズの第2弾は「ちょんまげ、ばさら」。
 一体このタイトルはどのような意味が込められているのでしょう、というのはさておき、今回の事件はスケール、登場人物ともに前回以上、というよりそうそうお目にかかれないようなとんでもない内容となっています。

 ある日、江戸城と目と鼻の先の内海に出現した軍船――それに乗っていたのは、地獄から甦った長宗我部元親とその配下たち。
 江戸を守る四神相応の封印が、風魔小太郎を名乗る者により解かれ、徳川家に恨みを持つ武将たちが甦ったのであります。

 その一番手である元親は、人の血を好む奇怪な生き人形を供に連れた、まさしく鬼若子。自分の天下取りを邪魔した徳川家、そして自分と愛する人形を倒した相馬二郎三郎への怨念に凝り固まって、彼は江戸に現れたのであります。それに対し、太平に慣れた幕閣はあまりに無力。しかし、そこに単身長宗我部の軍勢に切り込んだ男が――

 というのが冒頭のエピソードなのですが、ここで孤剣を振るって大活躍するのが、小次郎ではないのが、いかにも本作らしいすっとぼけ方で楽しい(ちなみにここでは、意外な人物が意外な大暴れを見せてくれます。地味な印象の強い、この人物史上に残る大殺陣ではないかしらん)。
 ぽんぽこの方も、実は四神の一人(!)という意外な設定を背負いながら、のっけから任務放棄といういい加減さで、伝奇的な大事件とのギャップと、この主役コンビの相変わらずの暢気さが、本作の最大の魅力と感じます。


 …しかし、この「実は」というのが案外な曲者。本作においては、実は(ややこしい)「実は」が非常に多いのであります。

 実際のところ、本作は意外な設定のオンパレードといった感があります。
 今述べたように、冒頭のエピソードに登場する元親の設定や、ぽんぽこの使命などがまずそうなのですが、ほとんど全ての登場人物に、この「実は」があるのです。
 それがまた、実に「伝奇的」なものばかりで、本来であれば私など大喜びなのですが――

 いかんせん、これだけ連発されると、さすがにどうなのかなあ…という気分になってくるのが正直なところ。
(さらに言ってしまえば、「実は」が、そのキャラクターをより掘り下げる形に作用しているのであればよいのですが…)


 考えてみれば、本作は、作者の作品の中では、おそらく最も大仕掛けな舞台設定を持つ作品であります。
 一方で作者は、個性的なキャラクターを用意して、それを動かすことで物語を動かす作風。
 その二つが、本作ではうまくかみ合っていないのではないか…そんな印象があるのです。

 キャラクター良し、設定も面白い。しかし…
 その違和感を、完結編であろう第3弾「ちょんまげ、くろにくる」で払拭してくれるか、見届けたいと思います。


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