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2012.02.17

「妖術武芸帳」を見終えて

 さて、「妖術武芸帳」全13話の紹介を無事に終えることができました。
 ソフト化されていない作品ゆえ、今まで以上に私が楽しいだけという周囲置いてけぼり企画ではありましたが、なかなか見ることができない作品だけに、こうして文章を書いておくのも、なにがしかの価値はあったのではないかと考えております。

 この「妖術武芸帳」、さすがに40年以上も前の作品だけあって、特撮技術など今の目で見ると厳しいものがありますが、しかしそれでもそれなり以上に楽しめるのは、さすがは…というべきでしょう。

 颯爽とした中にも骨太な存在感を漂わせる鬼道誠之介を演じた佐々木功、豪快で無鉄砲な愛すべき荒武者・覚禅を演じた藤岡重慶、二人の好演は言うまでもありませんが、さらに香たき殿を月形龍之介、毘沙道人を原健策とベテランが脇を固めて隙がない。

 特に原健策は、時に飄々と、時に迫力十分に毘沙道人を好演。日本侵略のために清国からやってきた妖術師の総帥という、リアリティがあるようなないような存在を、見事に具現化して演じていたと感じます。


 ただ、曲者なのは――ある意味本作の主役ともいうべき――この「妖術」の存在であります。

 本作における妖術とは、超能力や魔法とはことなり、種も仕掛けもある術であり、むしろ性質的には「幻術」と呼ぶべきもの(霞道士の冷凍術は素で超能力っぽかったですが)。
 これはこれで理にかなったものではあります。しかしどれほど意外性のある術であっても、結局は幻覚というのはやはり寂しい。
 その辺りを補うように、後半、各回のラストに(といっても数回ですが)妖術解説があったのですが、これも何となくすっきりしない内容で…

 その術が破れる時にも、例えば大きな音や光、何かの衝撃といった現実の現象により、脳が認識していた幻が消え去るというのもそれなりに納得できるのですが、いかにも地味であり、偶然の作用にも見えてしまうことがしばしばあったのはヒーローものとしてのカタルシスに欠ける面はあったと思います。


 更に物語面を見ると、後半に登場した伊上脚本の十八番・巻物争奪戦――本作においては、尾張藩の幕府転覆に協力を誓った大名を記した連判図という設定なのは面白い――が、あまりうまく作用せず、登場した次の回と、最終回くらいしか印象に残らなかったのが残念なところではあります。
(同じく定番の抜け忍くノ一ネタは、さらにその弟も絡めることにより、それなりに印象に残るものとなっていただけになおさら…)


 この辺りを見ると、本作が1クール打ち切りとなったのも――2クール目は西洋妖術師が登場する予定だったらしく、実に勿体ない!――やむを得ない部分はあるのかもしれませんが、しかし今回こうして本作を見てみると、そうした部分があってもなお、実に面白い作品であるという印象は強く残ります。

 正義の剣士vs邪悪の妖術師という、レトロといえばレトロ、王道といえば王道のシチュエーションを、時代劇の舞台で真正面から描いてみせる――それだけでしびれるではありませんか。
 ことに、TV連続時代劇がほぼ壊滅状態にあり、また時代小説もこじんまりとまとまった作品が多くなった印象のある今この時だからこそ、本作の荒唐無稽さとある種の実験精神が新鮮にすら感じられるのです。

 冒頭に述べたようにソフト化に恵まれていない作品でありますが、しかし決してそれは見る価値がない作品、ということではありません。
 私は幸運にも東映チャンネルで放送されたものを見る機会に恵まれましたが、今後も何がしかの形で放映の機会をぜひ設けていただきたい――そしてその際にはぜひご覧いただきたい作品であることは間違いありません。


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コメント

この作品は惜しい点が確かに、多くあります。敵の妖術師ですが、第一話で、老中のカゴが黒雲と嵐に吸い上げられ、空から人間のバラバラ死体が落ちてくる場面は、ショッキングでした。空恐ろしい敵が現れたものだ、果たして江戸時代の人々でこの恐ろしい敵を撃退できるのだろうかと思わせる名場面でした。だが何か意外に、誠之介に術を見破られると、モロイですな。日本対中国(清国)の対決といった、盛り上がる要素もあったのですが。佐々木功さんは、カッコイイし敵に対しても清国に帰るように説得するなど人間の心をもつヒーローを好演してます。楓さんももう少し早く、参戦させて三人で戦う場面をもっと見たかった。実はてだれのくノ一だったのに。2クール目を見たかったですな...

投稿: エージェント・スイス | 2012.02.22 22:05

エージェント・スイス様:
いやはや、あのバラバラ死体には本当に度肝を抜かれました。当時はたぶんマイナス方面にしか作用しなかったと思いますが…
しかしおっしゃるとおり、そして本文にも書いたとおり、妖術がどうにもあっけないのが残念でしたね。真っ向からやりあえば、それこそバラバラ死体にされかねない連中ばかりでしたが…
数年前、「隠密剣士」がコミック化されたことがありましたが、その伝でこれもやってくれませんかねえ。

投稿: 三田主水 | 2012.03.03 23:20

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