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2012.02.11

「はなたちばな亭恋怪談」 百物語が試す二人と一匹の絆

 今日も今日とて賑やかな神田蝋燭町。しかし、お久の手習い小屋・たちばな堂の家主であり、金一の奉公先である橘屋の旦那が旦那衆のあつまりで百物語を始めたことからおかしな雲行きになってしまう。お久・金一・クマの周囲で起きる怪事件の数々と、百物語の関係は。そしてお久と金一の二人の仲は…

 美人なのに超堅物の手習い小屋の師匠・お久と、幼なじみでいい男だけど純情な金一、そしてお久の家に住み着いたヘンな犬(?)・クマの二人と一匹が出くわすちょっと不思議な事件の数々を描いた「はなたちばな亭」シリーズもこれで待望の第3弾。
 …なのですが、これで何と完結とのこと。大いに残念ではありますが、しかしユニークな物語展開は相変わらず、くっつきそうでくっつかないお久と金一の仲は…さて。

 さて、本作の特徴は、物語全体を貫く背骨として、百物語が存在することであります。
 百物語と言えば、あの、蝋燭だか灯心だかを百本立てて、百話の怪談を話すというあのイベントのことであります。

 今回、その百物語を始めることとなったのは、お久の家主であり、金一の奉公先である橘屋の旦那をはじめとした、町内の旦那衆
 そもそもこの百物語は、旦那衆の一人、稲葉屋が言い出したもの。彼によれば、百物語が終わった時に、参加者には大変な幸運が訪れ、逆に途中で止めれば不幸が襲いかかるというのですが…

 かくて始まった百物語が進行するうちに現実で起きていく怪事を縦糸に、そして百物語で語られる怪談を横糸に、本作は展開していきます。そして、橘屋の旦那が語る怪談が、我らが二人と一匹が出くわした怪事件の数々…という寸法なのであります。


 いわゆる「百物語もの」の小説といえば、ほんの軽い気持ちで始めた怪談会が、いつしか現実を侵食し、のっぴきならぬ状態になって…というパターンがありますが、本作もまさにそれと言えるでしょう。
 最初は欲にかられて始まった百物語が、いつしか何者かに取り憑かれたように続けられ、そして最後に待つものは…という展開は、本シリーズとは思えないほど(?)厭な味わいがあります。

 そしてその怪異が単なる旦那衆の間だけでなく、二人と一匹にまで影響を及ぼし、彼らも否応なしに巻き込まれていく、というのはなかなかよくできた構造だと感じます。
 特に終盤、一連の事件の仕掛け人とも言うべき人間を含めて、登場人物たちの因縁絵巻が浮かび上がるのにはちょっと感心したのですが――


 しかし、シリーズの最終巻としてはちょっと弱いかな、という印象があります。
 シリーズも3作目ということで、変化球的な構造としたことは――1作目と2作目の終盤の展開が似ていたこともあり――これは大いに評価できます。
 しかしながら、ドラマの焦点が、シリーズのクライマックスであろう、お久と金一の仲の行方とは少しずれたところに設定されてしまっているのが気になるのです。
(もちろん、これはこれでこの二人らしくはあります。しかし今度は、クマが今回の物語に絡んでこないという点が…)

 二人と一匹の絆をまた少し違った角度から描くという試みは成功していると言えますし、何よりも個々のエピソードや登場キャラ自体は相変わらず実に面白いだけに、この点が大いに勿体なく感じられるところであります。


 つまり何が言いたいかといえば、ここでシリーズ完結は納得いかん! ということに尽きるのですが…

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