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2012.03.02

「歴史人」2012年3月号 史実と伝説の間に立つ剣豪

 あと少しで次月号が発売という時期に恐縮ですが、「歴史人」誌の3月号の保存版特集は「史上最強の剣豪は誰だ! 剣豪列伝」。昨年8月の「忍者の謎と秘史」に続き、まことに俺得な特集であります。

 この特集の巻頭に掲載されているのは、加来耕三による「発表! 本当に強いのは誰だ!? 史上最高の剣豪ランキング」。
 文字通りの剣豪ランキングですが、なかなか面白いのは、対象を四つのグループ――戦国乱世期・天下泰平期・幕末乱世期・アウトローに分け、それぞれで評価項目を少々変えているところでしょうか。
 なるほど、戦国乱世と天下泰平の時期では、剣術の持つ意味も大きく異なるわけで、それであればはっきりと分けて評価してしまおう、というのは頷けるお話です。
(その穴埋め的な形で、アウトロー部門は時代を超えて候補を集めているのも納得であります)

 さて、ランキングの内容の方は、各部門のベスト10はともかく、ベスト3くらいまでは誰が見ても納得…というわけでもないのが逆に面白い。
 菊池寛と直木三十五の武蔵名人論争にも見られるように、これはもう完全に人によって意見が分かれても仕方がないところ(この特集の冒頭にも、筆者なりの…という一文があります)。

 むしろ、ここでこの剣豪を持ってきたかと驚いたり感心したり、俺ならこうすると考えたりするのが、正しい楽しみ方と言えるかもしれません。
 その意味でも、十分に楽しませていただいた記事です。

 そしてランキングに続いては、塚原卜伝・上泉信綱・柳生宗矩の三人の剣豪の解説記事。 なるほど、活躍する時期もその内容も異なるとはいえ、この三人が剣の道で多大な功績を残したのは間違いない話で、納得の人選でしょう。
 ちなみにこの三人、それぞれ冒頭には正子公也のイラストが掲載されているのが目を引きます。独自の歴史人物解釈で印象的なイラストを描く氏ですが、なるほどこの三人はこうなるか! と感心です(…が、宗矩はどう見てもあの方ではありますまいか)。

 そしてもう一人、この三人とは別に記事とされているのは宮本武蔵。
 武蔵の五番勝負解説などは、まず良くある内容ですが、面白いのは記事の後半部分で、五輪書をはじめとする彼の兵法書にかなりのページを割いていることでしょう。
 武蔵といえば漂泊の剣豪という印象が一般には強いと思いますが(前述のランキングでもアウトロー部門にエントリー)、その一方で、こうして彼の残した剣理・思想面も注目されるというのは、これはそのまま武蔵という存在(の受け止められ方)の特異性を示しているようで、何とも興味深いところです。

 さて、そのほかにも「剣術流派の秘伝の系譜」「現代に伝わる剣豪の名流派」と、剣豪個人だけでなく、彼らが創始し、用い、遺した剣術流派についての解説もあり、かなり読み応えのあるこの特集。

 正直なところ、剣豪の中には後世に遺る記録が少なかったり、後世の人間の手が加わったものも多い人物もおり(というより大半がそう、という印象もありますが…)、それらを踏まえて書かれた部分も少なくないこの特集も、それなりに差し引いて考える必要があるかもしれません。

 しかし、それもこれもひっくるめて楽しむのも、剣豪という、史実と伝説の間に立つ存在に向き合う一つのあり方ではないかと、個人的には感じています。
 そうであるならば、この特集は剣豪ファンにとってまたとないプレゼント。前述の正子公也だけでなく、長野剛のイラストも実に格好良く、理屈抜きに楽しめる特集であることは間違いありません。

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