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2012.03.14

「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」 三銃士と二つの異物

 田舎からパリに出てきた腕自慢の青年・ダルタニアンは、成り行きから三銃士の仲間となる。枢機卿リシュリューの陰謀で謎の女・ミレディに奪われた王妃の首飾りを取り戻すためイギリスに向かうダルタニアンと三銃士だが、そこで待ち受けていたのは、バッキンガム公爵の飛行船だった…

 以前にも何度か書いた記憶がありますが、私にとって「三銃士」は大好物。ガスコーニュの快男児ダルタニアンと、銃士隊の三人の豪傑・三銃士の冒険譚は、子供向けのリライトではありましたが、幼い時分の心に鮮烈に焼き付いています。

 その「三銃士」が、ポール・アンダーソンの手で映画化され、そして海外版のポスターに、何故か巨大な飛行船の姿が描かれていたのを見た時には、大いにテンションが上がったものです。
 何しろ、あの「三銃士」に、伝奇感バリバリの飛行船…というより空中船艦ががブチ込まれているのですから!

 というわけで、「王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」という副題が付けられた本作、「王妃の首飾り」とは、ルイ13世の妻・アンヌの首飾りですが、この首飾りを巡るエピソードは、原作でも山場の一つであります。

 王妃からバッキンガム公爵の手に渡った首飾りを取り戻してリシュリューの陰謀を阻むため、海を渡りイギリスに向かうダルタニアンと三銃士のくだりは、ほとんどの読者の印象に残っているエピソードでしょう。
 「三銃士」が映像化される場合にはほとんど採用されるという、「南総里見八犬伝」でいえば芳流閣の決闘のようなエピソード…と言えばわかっていただけるでしょうか。

 本作も基本的に原作の冒頭からこのエピソードまでをなぞっているのですが――大きく異なる点が二つ。一つは、副題に首飾りと並んだ飛行船の存在。そしてもう一つは、女スパイ・ミレディーの大暴れであります。

 本作に登場する飛行船(というより飛行戦艦)は、かのレオナルド・ダ・ヴィンチの設計図を元にして作られたという設定。
 冒頭でこの設計図奪還に赴いた三銃士が、ミレディーの裏切りに遭い、オーランド・ブルーム演じるバッキンガム公爵に設計図を横取りされてしまうというエピソードが描かれ、それが公とミレディー、三銃士の因縁となっています。

 が、作中の飛行船は、そんな設定はどうでもよくなりそうな怪物ぶり。無数の大砲に、火炎放射器まで装備し、その姿はまさに空中戦艦(ちなみに当時は木造ガレオン船がやっとの時代であります)。
 そのオーバーテクノロジーをダ・ヴィンチ発明の一言で済ませてしまうのはあまりに豪快ですが、しかしクライマックスで二隻の飛行船が激突する様は、理屈抜きで胸躍るものがあります。

 そしてミレディーの方は、原作でも名うての悪女として暗躍するキャラですが、その色香を生かしたスパイ活動のみならず、アクション場面でも体を張って飛び回るという、例えれば峰不二子的なキャラに翻案されているのが面白い。
 彼女を演じるのは、監督の愛妻ミラ・ジョボヴィッチで、「バイオハザード」シリーズのように、これまでも監督は彼女を主役に据えて、如何に彼女が素晴らしいか! を力説するような映画を作っていますが、本作もその一つという印象すらあります。


 そんな二つの異分子が紛れ込んだ本作は、しかし意外なほど「三銃士」している印象があります。
 それは、宣伝ではほとんど主役扱いされているバッキンガム公やミレディーに負けず、ダルタニアンと三銃士が力演しているためであり、そして何よりも、この二つを除けば、先に述べたとおり原作の流れを踏えたストーリーとなっているためでありましょう。

 もっともそれは、実はこの二つを除いても物語が成立してしまうということでもあります(バッキンガム公とミレディーが、クライマックスの少し前で姿を消してしまうのもその印象を強めます)。
 その意味では困った作品ではあるのですが、それでも私が本作をそれなりに気に入ってしまったのは、「三銃士」という誰もが知っている作品を何とかアレンジして、今の観客にアピールしてみせようという、その心意気、エンターテイメント根性に依ります。(まあこの監督の場合、愛妻家精神の発露の部分も大きいと思うのですが)

 作品世界が崩壊しかねないギリギリ寸止めのところまで大胆に新しい要素をブチ込んで、何とか物語を盛り上げてやろう…その精神はある意味伝奇的であり、それであれば私が評価しないわけにはいかないのであります。

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コメント

確かに面白い映画だと思いますが、イマイチ興行成績が振るわなかったみたいのが、残念です。しかしさすがこの監督。ミラ・ジョボヴィッチのミレディーが強い、強い(笑)そしておそらくこの映画だけと思うんですが、「三銃士とミレディーの共闘」が見られる! もちろん裏切りがあるわけですが、そのパートが全員息もあっていてむしろ
この4人で、もう一作やってほしいぐらい。
ただ、リシュリュー枢機卿とロシュフォールはやはりこの映画でも極悪人扱い... 原作では必ずしも、絶対悪ではなく和解してるんですが..... まあ、そのほうが映画として成り立ちやすいからですかね。

投稿: エージェント・スイス | 2012.03.20 22:55

エージェント・スイス様:
まあ、本文に書いたとおり、本作独自の部分が原典とかみ合わせが良くなかったのが最大の理由だとは思いますが…
共闘の見られる冒頭部分はたしかにワクワクしましたね。

ロシュフォールたちは…やはり可哀想ですね。リシュリューはまだしも、ロシュフォールは運命が180度変わってしまったような

投稿: 三田主水 | 2012.04.01 18:48

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