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2012.04.13

「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」第5巻 そして熱い大地へ!

 天正遣欧使節に加わった少年・播磨晴信と彼に仕える凄腕忍者・桃十郎の旅を描く…という枠では収まらなくなってきた「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」。第5巻では、長きに渡り描かれてきた明大陸編が終了し、新たなる土地で新たなる冒険が始まることとなります。

 疫病に倒れた仲間たちと澳門の人々を救うため、ついに「仙人」を連れて澳門に帰ってきた晴信一行。
 やはり○○だったエステベスの過去とマテオ・リッチとの絆の物語、そして澳門の美少女漁師・江との別れを経て(またこの二つが熱く泣かせます)、ついに一行は澳門を離れ、新たな寄港地、マラッカを訪れることとなります。

 マラッカは現在のマレーシアですが、当時はポルトガル領。晴信たちがこの旅を始めることとなった遠因であるキリスト教を日本に伝えたイエズス会は、この地に東アジア布教の基点を置いておりました。

 既に熱帯に属するマラッカの風物は、日本からやってきた晴信たちにとっては珍しいものばかり。早速、マラッカの町を駆け回る晴信ですが――
 しかし、そこで彼が見たのは、各地から集められ、市場に売られた無数の奴隷。そしてその中には、日本から集められた者たち、いや晴信の知った者までが含まれていたのであります。

 激高する晴信の前に現れたのは、奴隷を集めていたアユタヤの戦士・獅子のルンディン。巨大な鰐を素手で叩き潰す――その豪快なアクション描写がまた素晴らしい!――彼との出会いから、マラッカ編は凄まじい勢いで展開していくこととなります。


 日本史に、特に戦国史に興味がある方であれば必ず知っているであろう天正遣欧使節。しかしそのイメージは、少年たちによる宗教使節という性質から、私にとってはかなり堅いものがありました。
 しかし本作においては、そのイメージを根底からひっくり返し、彼らの一員である晴信と桃十郎が、世界を股にかけて繰り広げる痛快な熱血冒険活劇として描き出しているのが誠に素晴らしい、としか言いようがありません。

 もちろん本作がフィクションであることは、当たり前、言うまでもないお話であります。しかし、本作で描かれる各地の情勢や登場する人物の多くは、大きくアレンジされているとはいえ、基本的に史実であり――そしてそれを踏まえて血湧き肉躍る、こちらの固定観念を粉砕するようなスケールの大きな冒険を描いてくれるのが、何とも嬉しいのです。

 このマラッカ編の背景には当時の東南アジアで繰り広げられていたアユタヤ王朝とホンサワディー(タウングー)王朝の争いが背景となっている模様。
 だとすれば、この巻ではまだ登場していないルンディンの主君であり親友である王子とは、アユタヤ史上に残る伝説の王であり、ムエタイの創始者と言われるナレースワンその人!?
 …などと、これから晴信たちが出会う人物・事件を考えるだけでワクワクしてくるではありませんか。


 そして彼らを待つのは、海外での冒険だけではありません。桃十郎が持つ信長の遺品を狙い、日本からは伊賀最強のくノ一が彼らの背後に迫ることになるのですから――

 海外での冒険、日本からの因縁。盛り上がるばかりのこの物語。オススメであります。

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