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2012.04.20

「CLOCKWORK」第1巻 快男児、幕末延長戦に挑む!

 非常にユニークな時代活劇だった「危機之介御免」の原作者・富沢義彦の新作は「幕末延長戦!?」と銘打たれた本作「CLOCKWORK」。
 恥ずかしながら単行本化直前までチェックしていなかったのですが、これがまた、実に私好みの痛快な作品であります。

 時は明治10年、アメリカから日本に向かう戦場で、一人の青年が、密航してきた黒人の少女・イザドラと出会うところからこの物語は始まります。

 逃亡奴隷であった彼女を捕らえんとするアメリカの武器商人・メイスン商会の追っ手の前に立ち塞がり、鮮やかな銃さばきで撃退してみせたこの青年の名こそは勝小鹿――かの勝海舟の嫡男であり、アメリカ海軍兵学校に留学していた青年。
 そして彼のまたの名こそは「クロックワーク」!――彼の名である小鹿と、機械仕掛けのように精密無比な彼の銃の腕をかけた二つ名であります(その彼が操る愛銃が、伝説のガンスミスの手になる10インチもの銃身を持つ化物銃・ペレグリンという外連の効かせぶりがまた嬉しい!)。

 この勝小鹿は、紛れもない実在の人物。史実でもやはりアメリカの海軍兵学校に留学し、帰国後に帝国海軍軍人となったものの、体が弱かったのか、幾度となく病気休職を繰り返し、夭逝したと伝えられる人物です。
 そんな実在の、しかし誠に失礼ながら後世にはほとんど知られていない人物を、本作では、快活な、それでいてどこか陰を背負った青年として描き出します。

 なるほど、彼が日本を離れていた慶応3年からの10年間は、まさに激動の時代であります。
 彼が敬愛していた(という設定)坂本龍馬は未来を夢見ながら暗殺され、徳川幕府は大政奉還を行って新政府が誕生。そしてその立役者の一人である西郷隆盛も、西南戦争を起こして自刃――

 未来に希望を抱く若者にとって、その10年間に不在であったことは幸か不幸か…それは判断が分かれるところではありますが、しかしそんな彼を待ち受けていたのが、ようやく平和になったはずの日本に、更なる争いの火種をもたらそうという者であったというのは、彼にとっては幸であり、敵に対しては不幸と言うべきでしょう。

 この第1巻の時点では、まだようやく登場人物が顔を揃えたばかりであり、この物語がどのような方向に転がっていくかはまだまだわかりません。
 しかし、明治の日本を舞台に、あの人物この人物が入り乱れて繰り広げる伝奇ガンアクションというだけで、大いにそそられるではありませんか。


 ただ一つ心配な点は――幕末・明治もののフィクションにはしばしばあることですが――有名人が多すぎて、主人公がその中に埋没してしまうのではないか、ということであります。
 何しろ本作では、明治ものではお馴染みの川路大警視や藤田五郎氏のみならず、「実は生きていたあの超有名人」が三人も登場するのですから…

 もちろんこれはこちらの勝手な心配。この第1巻のイキの良さを見る限りでは、杞憂に終わりそうであります。

 古い時代を受け継ぎ、新たな時代を切り開く、時代の申し子とも言うべきCLOCKWORKが、いかに幕末延長戦を戦い、その先に何を見るのか――大いに期待しているところです。

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