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2012.04.19

「戸隠秘宝の砦 第三部 光芒はるか」 三つ巴の大決戦

 秀吉の百万両の秘宝を巡る気比神宮での戦いで、絵図面は高嶋屋に、宝刀は鼠小僧次郎吉の手に渡った。不完全な絵図面のみを持つ近忠たちは、高嶋屋らを追い、秘宝の眠る戸隠山へ急ぐ。しかし行く手には、次郎吉の属する戸隠忍びたちが待ち受けていた。はたして三つ巴の戦いの行方は、そして秘宝は…

 三ヶ月連続刊行されてきました伝奇時代小説「戸隠秘宝の砦」も、この第三部「光芒はるか」にて、ついに完結。
 秀吉が遺し、三成・幸村らが隠した百万両の秘宝を巡る戦いは、ついに秘宝が眠る天然の砦・戸隠を舞台に移すこととなります。

 秘宝へ導くギアマンの皿・宝刀・絵馬の三つのアイテムのうち、絵馬と組み合わせることで秘宝のありかを示す絵図面となる皿は破壊されたものの、写し取られた絵図面は、小浜藩の悪家老・内藤主膳と結ぶ高嶋屋五郎左衛門の手に。
 そして秘宝の扉を開く宝刀は、主人公たる近忠の手から鼠小僧次郎吉の手に――

 唯一、部分的に写し取った不完全な絵図面を手にした近忠一行は、新たに近忠の義兄の欽之丞を、さらに高嶋屋の娘であり、いまや近忠と深く想い合うお絲を加え、戸隠に旅立ちます。

 しかし峻厳を極める戸隠山中で彼らを待ち受けるのは、奇怪な術を操る凶賊・鼠小僧次郎吉と、彼の背後に潜む筧十蔵率いる真田忍びの末裔たち。
 近忠一行、高嶋屋・内藤一味、そして真田忍び…秘宝を目前として、三つ巴の死闘が戸隠を血に染めることとなります。

 今回は舞台のほとんどが戸隠山中、そしてストーリーの方は秘宝の在処に辿り着くためのデッドヒートがメインということで、展開は比較的シンプルではあります。
 しかしながら、それだけに十分分量を取って描かれる三つ巴の決戦の迫力はなかなかのもの。
 町中ではまず不可能な火縄銃、いや大筒(!)まで繰り出されてのクライマックスは、ほとんど西部劇のような活劇で、嬉しい驚きがありました。


 個人的には、第二部まで近忠を助けて活躍した頼もしい助っ人である田中甚助が今回登場しなかったり(その代わりに欽之丞が登場したわけですが)、近忠のライバルになるかと思われたキャラクターがほとんど活躍しないままフェードアウトしたりと、首を傾げる部分はあります。

 また、クライマックスの秘宝争奪戦や、秘宝そのものの正体も、もう少し羽目を外して、こちらの予想をさらに裏切るような意外性を出して欲しかった、もう一歩踏み出して欲しかった、という印象もありますが、この辺りは個人の感覚かもしれません。


 これまでも繰り返し述べてきたように、いまや風前の灯である伝奇時代小説というジャンル。
 それを今、それも王道を往く形で復活させるに辺り、既存の文庫書き下ろし時代小説とある程度すりあわせる形で本作が描かれるのも頷ける部分はありますし、それが最も早道なのでしょう。
(伝奇時代小説復活の道は、本作で描かれた戸隠山中の秘宝への道と同様、崩れやすく細い道なのですから…)

 少なくとも本作が、今、如何に伝奇時代小説を書くかという問いかけへの、一つの答えとなっていることは間違いないのですから――

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戸隠秘宝の砦 第三部 光芒はるか (小学館文庫)


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