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2012.05.07

「新説時代劇集 忍者猿飛」第1巻 独特の空気感の忍者活劇+歴史劇

 「コミック乱ツインズ」誌で連載中のユニークな忍者コミック「新説時代劇集 忍者猿飛」の単行本第1巻であります。
 天正10年、武田家滅亡直後の信濃の国を舞台に、分身の術を操る少年忍者・猿飛佐助の活躍を描く漫画、のはずですが…

 「コミック乱ツインズ」という雑誌は、昔から思いもよらぬ作家が思いもよらぬ作品を描くという伝統(?)があるように思います。
 一時期はずいぶんおとなしい雑誌になってしまい、大変残念に思っていたのですが、本作は最近の連載作品の中でも極め付きの異色作。何しろ作者は西風――自動車(マニア)を題材とした漫画をメインとする漫画家なのですから。

 本作の主人公・猿飛佐助は、言うまでもなく超有名なあの忍者。その師匠・戸沢白雲斎も、時代ものでは定番キャラクターですし、彼らが今後縁を結ぶであろう真田家の面々も同様であります。
 その意味では、本作は一見定石通りのキャラ配置、物語に見えるのですが――

 しかしそれでいて、実際に読んだ印象は非常にユニーク。間の取り方に独特のユルさがあると言うべきか…
 普通の会話シーンだけではなく、たとえば第1話で描かれる免許皆伝試験での佐助と白雲斎の対決、そしてこの第1巻の後半で描かれる佐助と風魔小太郎とその配下の死闘にもまた、この独特の空気感が漂っています。

 単純にコメディではなく、死ぬ時は普通に人が死んでいく、殺されていく作品であります。しかしそんな場面ですら、どこかあっけらかんとした雰囲気が漂い…そしてそれが逆に残酷さすら感じさせる。
 すごく面白い! というわけではないように思うのですが、しかしどこか惹かれる――そんな空気感なのであります。

 そして、派手なような地味なような忍術合戦の一方で、本作のもう一つの主人公と言うべき、真田家サイドの描写も面白い。
 冒頭に述べたように、本作の背景となっているのは武田家滅亡直後の時代。
 それが、それまでも安定していたとは言い難い真田家にとって、新たな苦難の時代の始まりであることは、歴史好きの方であればよくご存じでしょう。

 本作においては、そんな中で家の行く先を模索する真田昌幸の姿も並行して描かれることになるのですが、ギャグ混じりで描かれるその昌幸像はなかなかに魅力的に感じられます。
 特に初登場シーン、本作の佐助の最大の特徴である分身の術の秘密――要するに五つ子+1なのを隠しているのであります――を、一発で見破り、実に巧妙な誘導の仕方で証明してしまう場面など、実にシビレるのです(その同じ場面で描かれる、少年時代の幸村のボケっぷりもすごいのですが)。

 独特の空気感を、いかにも狙ったものとして拒否反応を感じる方もいるかもしれません。しかし、このすっとぼけた雰囲気の中で、忍者アクションと歴史劇を両立・融合させてみせるのは、なかなかに得難い味であり――この妙味は、どうにもクセになるように感じられるのです。

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