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2012.05.04

「陣借り平助」第2巻 冒険児、勘助・家康と出会う

 宮本昌孝の原作を長谷川哲也が漫画化した「陣借り平助」の第2巻であります。
 強きをくじき、弱きを助ける戦国の快男児は、この巻においても戦国の有名人と思わぬ対面を果たすことになります。

 「陣借り」とは、単行本カバーの解説を引用すれば「一時的に陣を間借りして戦に参加すること。自由契約の傭兵のようなもの」。
 普通は合戦の際にどこかの陣に加わり、そこで戦功を立てて褒美や仕官の口を得るために行うものですが、本作の主人公・魔羅賀平助は、どうにも桁外れな人物であります。

 何しろ、陣に加わるのは、必ず弱い側、負けている側で、その後、加わった側が勝ち組になったと見るや、すぐに陣を離れてしまうという変わり者。ただ勝つためでなく、自分の力を存分に活かして戦うことをもって快とする冒険児なのです。

 この「陣借り平助」は、この平助が戦場を渡り歩く中で、様々な戦国時代の有名人と出会う姿を描いた連作集ですが、この漫画版第2巻に収録されたのは山本勘介と川中島の合戦を描く「落日の軍師」、今川家から独立したばかりの松平元康(後の家康)とその妻・築山殿の姿を描く「恐妻の人」の、二つの前後編。

 登場人物、描かれる事件とも、基本的に有名なものばかりなのですが、しかしそこに平助という桁外れの人物が加わることで、また異なった色彩が加わってくるのが、本作という物語。

 たとえば「落日の軍師」は、枯れ木のような老人となってもなお剣呑な闘気を放ち、平助をして「こんな爺さんに俺もなりてぇ~~」と言わしめる勘介の「生涯いくさ人」っぷりが強く印象に残る作品。
 一方、「恐妻の人」では、精強にして忠烈無比の三河武士を率いながらも、タイトルの通り年上の妻に頭の上がらぬ元康の悲喜こもごもの姿が、究極の自由人・平助との対比で浮かび上がります。

 さらにこの2編では、凄腕のスナイパー・頂算と平助の因縁の対決が、縦糸として描かれるのも面白い。
 槍を取って向かい合っての戦いであれば、一対一、いや一対多数でも決して恐れることのない平助といえど、長遠距離からの狙撃は勝手が違います。
 姿なきスナイパーの攻撃をいかにかわし、自分の攻撃を叩き込むか――原作でも「恐妻の人」のラストの対決シーンは実に面白かった(?)のですが、この漫画版ではさらに豪快さがアップ。ラストを締めくくるにふさわしい対決となっています。

 …そう、ラストといえば、実はこの漫画版「陣借り平助」は、まことに残念ながらこの第2巻をもって完結。
 原作の持つ豪快さをさらにアップし、ヒーロー活劇でありつつも、いい意味でどこか泥臭さを感じさせるこの漫画版は、原作の面白さに、ビジュアル面の迫力・説得力が加わって大いに気に入っていたので、正直に言えば残念ではあります。
(ただし、原作第一弾では、この後は比較的小粒のエピソードが続くので、ここで一まずの完結、というのはわからないでもありません)

 もっとも、長谷川哲也は、本作からほとんど間を空けずに、同じ掲載誌にオリジナル新作「セキガハラ」を連載するとのこと。
 時代的に(たぶん)平助の活躍は見られなさそうな合戦の場で描かれる長谷川流活劇に期待することといたしましょう。

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