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2012.05.13

八犬伝特集その十四 「八犬士スペシャル」

 まことに久方ぶりの八犬伝特集、今回は思わぬ形で復活した岡村賢二の「八犬士」であります。
 この「八犬士」は「別冊漫画ゴラク」誌に2005年から1年間連載された作品。しかし単行本が第2巻まで刊行されたところで中絶し、その後読む手段がなくなっていたものなのですが…

 それがこのたび、上下巻のコンビニコミック「八犬士スペシャル」として、連載ラスト分まで収録されて刊行されたのは、まことにありがたいお話。実はコンビニコミックは、本作のように単行本未収録分までまとめた形で刊行されることがあり、油断できないメディアなのですが…それはさておき。

 この「八犬士」は、言うまでもなく「南総里見八犬伝」の漫画化。後述するように、後半はオリジナル要素が強くなるのですが、基本的には原作を比較的忠実に漫画化した作品であります。
 作者の岡村賢二は、このブログでもしばしば取り上げておりますが、ここしばらくは時代もの・歴史もののジャンルで活躍している作家。
 格好良いものを格好良く、美しいものを美しく、そしておぞましいものをおぞましく――描くべきものを描くべき形で描くというのは当たり前のことではありますが、それを劇画らしさとメジャー漫画らしさを両立させつつ描くのは、この作者ならではでしょう。

 本作においても、多様な登場人物たちをきっちりとそのキャラクターを踏まえた上で描き分けており――元々原作でのキャラ立ちがはっきりしているという点はあるものの――原作読者であれば、絵だけを見て、ああこれはあのキャラだな、とわかるのはさすがと言うべきでしょう。

 さて、内容の方は、原作で言えば古那屋の件の終わりまで。犬塚信乃・犬飼現八・犬田小文吾の三人が揃って、市川を脱出、大塚に向かって旅立つところで完結となっております。

 言うまでもなく原作ではかなり最初の部分で終了しているのですが、そこで物語にそれなりの膨らみを見せるためか、かなり後半部分――芳流閣の決闘以降――に、本作はオリジナル要素を加えています。
(ちなみに、既刊の単行本第2巻が、この芳流閣直前までの収録となっているのが、面白いといえば面白いですね)

 それが足利成氏の愛妾・玉蝶の存在。本作では完璧に暗君扱いの成氏ですが、彼を狂わせ、悪政に走らせたのがこの玉蝶で…とくれば(名前も含めて)想像がつくかと思いますが、彼女の正体は玉梓が怨霊の化身。
 人間離れした様々な能力を用い、終盤では原作でちょい役の新織敦光をパワーアップさせ、意外過ぎる大暴れをさせてしまいます。

 この辺りのオリジナル展開は、これはこれで良くも悪くも漫画的で楽しいですし、八犬士と玉梓の関係を印象づけるためにも悪くない設定だとは思いますが、前半がかなり原作に忠実だっただけに、浮いて見えてしまうのは残念なところではあります。
(ただし、雑誌のカラー的には終盤路線で押していった方が受けただろうなあ…とは正直なところ思います)

 そんなわけで、絵柄的には素晴らしいものがあるものの、残念ながら原作でいえば中途で終了してしまった本作。しかし、全てが単行本とならずにいたところが、こういう形で陽の目を見たというのは、ファンにとっては本当に幸運であったと感じるのであります。

「八犬士スペシャル」(岡村賢二 日本文芸社Gコミックス 全2巻) 上巻Amazon / 下巻 Amazon


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