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2012.05.15

「傾城水滸伝」(その一) 男女逆転の生む迫力

 最近は、戦国武将やら三国志の武将やら、様々な歴史上の人物が漫画やアニメで女体化されるのを散見します。こうした女体化文化(?)に対して、しばしばその源流として挙げられるものの、実際に読んだ人間はかなり少ないと思われるのが、曲亭馬琴による「傾城水滸伝」であります。

 数々の男を誑かしながら、あれよあれよという間に異数の出世を遂げて後鳥羽院に寵愛を受けるようになり、京で権勢を欲しいままにする傾城・亀菊。
 既に源氏三代は亡く、執権北条義時により幕府が簒奪され、京で鎌倉で、佞人ばらがはびこる時代に、志津ケ嶽は江鎭泊に集った侠女たちが活躍する――

 そんな本作は、原典の舞台を鎌倉時代の日本に移し替え、そして登場人物の性別をほとんど全て入れ替えたという作品。
 つまり、原典では108人中男性105・女性3だったのを、女性105・男性3に入れ替えただけではなく、悪役・脇役に至るまで男女性別を逆転させているのであります。

 しかし驚くべきは、舞台と性別、そしてもう一つある部分を除けば、ほとんど原典をそのままなぞった内容となっている点で――
 つまり、本作において花和尚魯智深に当たる花殻の妙達は、酒に酔って寺で散々乱暴狼藉を働いた上に盛大に粗相をしますし、黒旋風李逵に当たる旋風の力壽は二丁斧を振りかざして死体の山を築きますし…一体どの辺りの需要に応えているのだ、という気もいたしますが、この辺りは馬琴先生の律儀さというべきでしょうか。
(ちなみに行者武松に当たる女行者竹世が虎を殴り殺す場面では、何故当時の日本にいないはずの虎が山中にいたのかをきちんと説明しているのも楽しい)

 それにしても、上に挙げた面々もそうですが、美少年のもとに強引に押しかけ嫁になろうとした億乾通お犬(小覇王周通)、若衆に目がなく攫ってきては我がものにしようとする使遣腐鶏(矮脚虎王英)など、男女逆転すると異常な迫力を持って感じられるのが面白い。
 原典では「ああ、しょうがねえ連中だなあ…まあ山賊だし」で何となく済むものが、ここまでイメージが変わるというのは、私が無意識に男女の性差というものに縛られているせいなのかもしれませんが…

 しかし、それ以上に原典と明確に異なる、ある部分があります。
 長くなりましたので、それについては次回述べましょう。

「傾城水滸伝」(滝沢馬琴 本邦書籍「滝沢馬琴集」第13,14巻所収)

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