「続 明治開化 安吾捕物帖」 時代を超えた作品の全貌
角川文庫から、坂口安吾の「続 明治開化 安吾捕物帖」が刊行されました。これまで角川文庫ではシリーズ全20篇のうち8篇が「明治開化 安吾捕物帖」として刊行されていましたが、この続編には残る12篇が収録されております。
「明治開化 安吾捕物帖」については、これまで(「UN-GO」という作品を通じて)幾度も語ってきましたが、もう一度紹介させていただければ、本作はタイトルにあるとおり、坂口安吾による、明治の文明開化の時代を舞台とした連作ミステリ。
数々の怪事件に対し、氷川に隠居する維新の英傑・勝海舟が推理を行い、それに対し、洋行帰りの名探偵・結城新十郎が、海舟の推理を覆す真実を暴くというのが、本作の基本構造であります。
本作は、これまで様々な出版社から刊行されていましたが、冒頭に述べたとおり、角川文庫の正編は8篇のみを収録。一番最近に刊行された全20篇を読むことができるちくま文庫版も絶版となって久しく、青空文庫に全編収録されているとはいえ、書籍として手軽に読むことができない状況にありました。
それが今回こうして続巻が刊行されたことにより、手軽に読むことができるようになったのは、欣快の至りであります。
さて、本書に収録された12篇は以下の通り――
「魔教の怪」
「冷笑鬼」
「稲妻は見たり」
「愚妖」
「幻の塔」
「ロッテナム美人術」
「赤罠」
「家族は六人・目一ツ半」
「狼大明神」
「踊る時計」
「乞食男爵」
「トンビ男」
何故か正編に収録されたなかった「魔教の怪」を除き、シリーズ後半の作品が収録されております。
個々の作品の内容については述べませんが、(シリーズ全体がそうであるように)どの作品も曲者揃い。
上で紹介しておいて何ですが、シリーズもので往々にして見られるように、実は終盤はパターン通りの構造でない作品も多く、「狼大明神」以降の作品では海舟による推理(とその後の負け惜しみ)がなかったり、ラストの「トンビ男」は、新十郎がむしろ脇に回った感のあったりと、構造の面でもバラエティが感じられるようになっています。
個人的には「ロッテナム美人術」が、新十郎や海舟をもってしてもどうにもならないこの世の暗部を描いた作品として非常に強い印象が残っております(「乞食男爵」もこれに近い苦い後味の残る作品で、こちらも個人的に好きな作品です)。
さて、今回の続編刊行が、本作を原案としたアニメーション「UN-GO」の放映の影響であることはまず間違いないところかと思います。
実は本書の解説は、その「UN-GO」の脚本家である會川昇が担当しているのですが、これがまた必見なのであります。
安吾とミステリの関係、「安吾捕物帖」という作品の解説と同じくらいの分量と熱意でもって、本作を原作とした「十郎捕物帖・快刀乱麻」とその脚本を担当した佐々木守を語っているのは、これはいかにも會川昇らしい…などと思っていたのが大間違い。
佐々木守という脚本家の特質――佐々木守と「戦後」の関係からとって返し、そこから坂口安吾の「戦後」、本作の中の「戦後」を語り、そこからさらに安吾の、本作の超時代性と(一見矛盾するようですがそれとは表裏一体の)現代性へと繋いでいくのには、ただただ感心させられました。
この解説だけでも読む価値がある――とまではさすがに言いませんが、「UN-GO」という作品を通じて本作を知った方、興味を持った方には、ぜひ目を通していただきたい文章であることは間違いありません。
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