« 「ふたり、幸村」(その二) 神と人の間に | トップページ | 6月の時代伝奇アイテム発売スケジュール »

2012.06.01

「無限の住人」第29巻 ネオ時代劇、ここに極まる

 「無限の住人」もついに30巻を目前とした第29巻。前の巻でついに集結した剣士たちの死闘はまさにクライマックス、最終章に突入してから既に10巻近くを費やしてきたわけですが、いよいよ結末も目前という印象であります。

 吐鉤群と六鬼団による逸刀流殲滅の企てから始まった最終章も、逸刀流の江戸城襲撃を挟み、逸刀流・六鬼団・そして万次と凜たちによる、一種のトーナメントバトルとなって展開してきました。

 いくつもの流れに分かれて演じられてきた戦いは、ついに那珂湊で合流。生き残った中でも最強の面子が、三つの戦いを演じることになります。
すなわち
 万次・凛vs荒篠獅子也
 天津影久vs吐鉤群
 乙橘槇絵vs弩馬・足江進・御岳
の三番勝負が。

 いやはや、どの勝負も、それぞれの形で実に本作らしく、ある意味剣戟バトルの極限を極めたという印象があります。
 もはや剣戟というよりも異形の力と力のぶつかり合いと化した感のある万次vs獅子也戦(その中で一種頭脳バトル的展開も用意しつつ、万次と凜の強固な絆を描いてみせるのもまた面白い)。
 立ち並ぶ鳥居の中を舞台に、一歩間違えるとギャグになりかねない超高速バトル――お互い刀で斬り合っているはずなのに、鳥居が…という辺りの突き抜けた感覚にはただただ感心――の末、衝撃的な結末を迎える天津vs吐戦。
 そして、一対三の、それもそれぞれが特徴的な得物を手にした中で展開される超変則バトルが、本作でこれまで培われてきたコマ落とし的剣戟表現も交えて華麗に描かれる槇絵vs弩馬・足江進・御岳戦――

 「ネオ時代劇」という表現は、正直なところ決して褒め言葉ではないと個人的には感じてきましたが、しかし、ここまで突き詰めて描かれれば、もうこの言葉を賛辞として使うほかありますまい。


 さて、この剣戟また剣戟の展開においては、物語の進展は、戦いの勝敗以外にはほとんどないのですが、しかしもちろん、停滞したなどという印象は微塵もありません。
 あとはそれぞれの人生がいかに幕を下ろすか描くのみ…と言ったところなのかもしれませんが、それでいて、まとめに入ったという印象は微塵もないのは、もはや語るべきものは語り尽くした、という一種の余裕のようなものが本作からは感じられるからかもしれません。

 この巻での戦いの結果を経て、それぞれの陣営で、自らの足で立つ者はごくわずかとなりました。
 おそらくはあと1,2巻で全ての決着がつくのでしょう。その時に、いやそこまでに何が描かれるのか――最後まで見届けたいと思います。

「無限の住人」第29巻(沙村広明 講談社アフタヌーンKC) Amazon
無限の住人(29) (アフタヌーンKC)


関連記事
 再び動き始めた物語 「無限の住人」第18巻
 「無限の住人」第19巻 怒りの反撃開始!
 「無限の住人」第二十巻 不死力解明編、怒濤の完結!
 「無限の住人」第二十一巻 繋がれた二人の手
 「無限の住人」第二十二巻 圧巻の群像劇!
 「無限の住人」第23巻 これまさに逸刀流無双
 「無限の住人」第24巻 二人の凶獣
 「無限の住人」第25巻 裏返しの万次と凛
 「無限の住人」第26巻 追撃戦と潰し合いの中で
 「無限の住人」第27巻 副将戦の死闘!
 「無限の住人」第28巻 役者は揃った!

|

« 「ふたり、幸村」(その二) 神と人の間に | トップページ | 6月の時代伝奇アイテム発売スケジュール »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/54816300

この記事へのトラックバック一覧です: 「無限の住人」第29巻 ネオ時代劇、ここに極まる:

« 「ふたり、幸村」(その二) 神と人の間に | トップページ | 6月の時代伝奇アイテム発売スケジュール »