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2012.06.19

「邪忍の旗 黒衣忍び人」 脳天気忍者と悩める若様

 武田透破の末裔で雇われ忍びの狼火隼人が、将軍家光の日光参詣を目前とした時期に目をつけたのは、下野国早乙女藩内の廃村を巡る事件だった。早乙女藩主の嫡子・津八郎と交誼を結んだ隼人は、暗躍する謎の一団の調査を始める。一方、隼人の宿敵・柳生十兵衛もまた、同じ敵に対して動き出していた…

 武田信玄が生んだ忍び集団・透破の末裔で、今は一件百両で裏の仕事を請け負う一党の長である狼火隼人を主人公とした忍者アクション小説の第二弾であります。
 今回は、日光東照宮落成間近の下野を舞台に、隼人をはじめとする三人の若者の生き様が交錯することとなります。

 仕事を求めて放浪する隼人たちが下野国早乙女藩内で偶然出くわしたのは、謎の一団に追われる娘。目明かしであった彼女の父は、廃村に住み着いたという一団を探るうちに殺され、彼女もまた命を狙われたのであります。
 それを救った隼人は、これは飯の種になるかも…と探索を開始。そんな中、彼は早乙女藩主の嫡子で、自ら手勢を率いて山賊退治をするような熱血漢の津八郎と出会うことになります。
 かたや裏稼業ながら脳天気な忍び、かたや父に冷遇され若き血をもてあます若君。全く異なるようでいて、どこか似たもの同士の二人はたちまち意気投合、隼人は彼をスポンサーにして正式な探索を開始することとなります。

 一方、同じく探索の末に早乙女藩を訪れたのは、隼人にとっては商売敵であり宿敵である公儀隠密・柳生十兵衛。彼もまた、探索の中で謎の敵に襲われ、隼人とは互いに牽制しあいながらも、しかし同じ敵を相手にするという奇妙な関係となるのでした。

 かくて、隼人と津八郎と十兵衛――それぞれに戦う理由を抱えた彼らは、将軍家光を狙う大陰謀に、それぞれの立場から立ち向かうことと相成ります。


 そんな本作の最大の特徴は、やはり隼人の(忍びらしからぬ)陽性のキャラクターでしょう。
 裏街道を往きながらも、天性の人の良さと脳天気さを失わぬ隼人ですが、今回は同年代であり、表の世界(?)にありながらも屈託を抱えた津八郎と出会ったことで、その明るさを前面に出してくるのが何とも楽しい。

 宿敵である十兵衛も、今回は孤独に疲れたこともあってか、共通の敵に対して隼人と共同戦線を組もうとするなど(そして思い切り嫌がられるのがまたおかしい)、キャラクターの関係性が隼人を中心に動いていく点は楽しめます。

 その一方で、敵の企みがあまりにストレートであったり、小人物は基本的に小人物のままであったりと、引っかかる点はあります。また、地の文が説明過剰に感じられるのも残念な点ですが、これは個人の好みの問題でしょう。

 その辺りを加味すると、百点満点というわけではありませんが、しかし今日(の文庫書き下ろし時代小説)では少々珍しい忍者ものとして、肩の凝らないエンターテイメントとしては楽しめるのもまた事実。
 第3弾は島原の乱が題材とのことで、こちらも近々読んでみる予定であります。

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