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2012.06.17

「水滸伝」(青い鳥文庫) 一冊に圧縮した水滸伝世界?

 これまでこのブログでも色々な「水滸伝」を取り上げてきたように、現代日本ではマイナーと言われつつも、意外と水滸伝リライトは刊行されているものです。そんな中でも意外と見逃されがちなのが児童向けリライトですが、今回はその中で講談社青い鳥文庫版を取り上げましょう。

 この講談社青い鳥文庫版は、編訳を立間祥介、挿絵を井上洋介が担当したもの。
 内容的には、ある意味日本のりライトでは定番の七十回本ベース、すなわち百八星勢揃いまでが描かれています。

 しかし、七十回本とはいえ、全一巻という分量でそれを描くのは、少々無茶があるように思えなくもありませんし、確かに、全体的にかなり駆け足ではあります。
 特に、魯智深・林冲・晁蓋・武松のエピソードで全体の半分くらいが占められているため、それ以降がかなり詰め込まれたように感じる…というのは実は原典もそうなので完全に印象論ですが…

 それでも、少し小さめの活字で埋め尽くされた約300ページという分量は、それをかなりの部分補っている――というより、よくもまあ、この一冊に水滸伝の全容を詰め込んだものだ、と素直に感心させられたほどであります。
 たとえば、一つの指標として百八星の出欠――という言い方はおかしいかもしれませんが――で見ると、名前のみの面子も多いとはいえ、実に88人が登場。これ以上の分量がある水滸伝でも、60人~80人(いずれこの辺りはどこかに掲載したいと思いますが)であることを考えると、これはかなりのものかと思います。
(これだけの出欠率の中で、天コウ星36人の中で登場できなかった李応・董平・索超ェ…)

 もちろん、物語の内容を登場人物の人数だけで考えるのはやはりマニアの見方以外の何ものでもなく、特にこの本で初めて水滸伝に触れる方もいるかもしれないということを考えると、やはり少し厳しいかな…という印象はあります。
 井上洋介の、荒々しくも抑えるべきところは抑えた、そしてどこか昏いものを感じさせる画風は、水滸伝に非常に良く合っているのは間違いないのですが…


 ちなみに本書で妙に印象に残ったのは、人肉食の描写が妙にしっかりしている点であります。
 この辺り、原典を児童書にする場合に、浮気と並んでまずオミットされる部分だと思うのですが(現に本書でもその辺りは非常にあっさりと流されているのですが)、本書ではそこをかなりきちんと残しているように感じられます。
 特に黄文炳が生きながら食われる辺り、わずか数行とはいえかなりしっかり書かれており、原典同様、鬼面人を驚かす類のものだと思いますが、ちょっと不思議に感じた次第です。

「水滸伝」(立間祥介編訳 講談社青い鳥文庫) Amazon
水滸伝 (講談社 青い鳥文庫)

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