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2012.06.14

「拳侠 黄飛鴻 日本篇」(その一) 黄飛鴻、海を渡る

 医師にして最強の中国武術家・黄飛鴻。彼は日本に亡命した親友・孫文を暗殺者から守り、そして日本で行方不明となった婚約者・十三姨を探すため、弟子と共に勇躍日本に渡った。しかしその前に立ち塞がるのは、清朝の暗殺者、そして忍者、横綱、最強の侍――海を渡り、黄飛鴻の仏山無影脚が唸る!

 香港映画ファン、カンフー映画ファンであれば黄飛鴻のことはよくご存じでしょう。
 清朝末期/中華民国初期の広州で活躍した名医にして拳法の達人、日本ではジェット・リー演じる「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」(以下「ワンチャイ」)で知られるようになった実在の人物であります。

 本作は、その黄飛鴻を主人公に――それもワンチャイ版をベースに――して、彼が実は明治34年の日本に来日していた! という意外伝。12年前に出版されたものですが、今読んでも、いや今読んだ方がさらに楽しめる痛快な作品であります。

 物語は、広州の黄飛鴻のもとに、風変わりな日本人・平山周が訪れたことから始まります。
 かつて飛鴻に命を救われ、以来友情を結んできた孫文からの手紙を携えてきた彼は、飛鴻に、清朝の暗殺者により孫文が狙われていること、そして日本での留学中に消息を絶っていた十三姨――飛鴻の年の近い叔母にして婚約者――と親しかった革命家が暗殺者に殺害されたことを語ります。
 孫文の目指す革命には関心の薄い飛鴻ですが、友の命に危険が迫っていることを、そして愛する女性がそれに巻き込まれたと思われることを知り、遂に立ち上がることとなります。かくて、(自称)一番弟子の梁寛と、紅一点の弟子・莫桂蘭の二人を連れ、飛鴻が明治の東京に現れるのであります。

 と、この時点でワンチャイファンはニヤニヤものでしょう。かつて黄飛鴻に命を救われた孫文、叔母で婚約者の十三姨とくれば、(もちろん明言はされていないものの)これはもうワンチャイシリーズと地続きの世界の物語としか思えないのです。
(梁寛のお調子者ぶりも相変わらず…)
 海外の有名人が、実は来日していた というのは、時代ものでもある意味定番の題材ではありますが、本作はそれを黄飛鴻で、しかも日本で黄飛鴻の名を知る人の大部分が思い浮かべるであろうワンチャイシリーズのそれでやってしまったのが、大胆であり、そして実に楽しいのであります。

 かくて、一人孫文の義士団をしつつ、十三姨をも探すこととなった飛鴻ですが、もちろん彼の行く手は波瀾万丈。
 孫文を清朝からの刺客・五殺手が、日本の官憲が、黄飛鴻を敵視する日本の右翼結社が送り込む日本武術家が、次々と彼の前に立ち塞がることとなるのです。

 それが、日本の官憲は甲賀流忍術の継承者、日本武術家は巨漢の横綱にテロリスト剣術家、というのに一瞬頭を抱えそうになるのですが、実はそれが皆、実在の人物というのが、本作の凄いところなのであります。

 というところで、長くなったので詳しくは次回に続きます。

「拳侠 黄飛鴻 日本篇」(東城太郎 中央公論新社C・NOVELS) Amazon
拳侠 黄飛鴻 日本篇 (C・NOVELS)


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