« 「サプライズ時代小説」特集(その一) 実は○○○な作品たち!? | トップページ | 「信長のシェフ」第4巻 姉川の合戦を動かす料理 »

2012.06.23

「サプライズ時代小説」特集(その二) サプライズにもほどがある作品たち!?

 意外なサブジャンルに属するけれどもそれを明らかにすると著しく興趣を削いでしまう時代小説を、サプライズの中身は伏せたままで紹介する「サプライズ時代小説」特集の第二回であります。今回はメジャーどころ、隠し球、そして問題作と様々であります。

 さて、三作目は光瀬龍「寛永無明剣」。非常にメジャーな作品であり、本作の趣向をご存じな方も多いかと思いますが、しかしやはりサプライズ時代小説の先駆として、取り上げておきたい作品であります。

 大坂の陣の残党を追う北町奉行所同心・六波羅蜜たすくを襲う暗殺の刃。それは不可解にも、将軍家指南役である柳生宗矩・十兵衛らによるものでした。一連の事件の裏を追うたすくが知った真実とは…

 いやはや、その真実というのがあまりに凄まじく、本作の発表時に、リアルタイムで予備知識一切なしで読んだ方がどれだけ驚いたか、想像するだけで頬が緩みます(その意味では今回の記事は本当に野暮で申し訳ないのですが…)
 今となっては、作者の作風を考えると趣向はある程度は予想はつくかもしれません。しかし本作で描かれる世界の広がりは、そんな形式的なものを遙かに超えて、まさに光瀬作品ならではの味わい、と言えるでしょう。
 この作者でなければ描けない作品であります。


 さて四作目は、あまり取り上げられたことのない隠し球的作品。鈴木輝一郎の「白波五人男 徳川の埋蔵金」です。

 タイトルの通り、本作はあまりに有名な盗賊・日本左衛門をはじめとする白波五人男を描いたいわゆるピカレスクもの。徳川家康の埋蔵金三千万両の存在を知った五人男が、徳川吉宗を向こうに回し、秘宝争奪戦を繰り広げるのですが…が…

 断言しますが、本作の秘宝の正体は、絶対予想できないと思います。まさかまさか、ピカレスクものが、クライマックスで○○ものに転じるとは、誰が予想できましょうか。(それがまた○○ものとして結構燃える展開なのです)
 正直なところ、未だにこの作品の内容については、○○ものを愛するあまりに私が見た幻覚だったのでは…と思うこともあるのですが、しかしあくまでも現実。
 トリッキーな作品が少なくない作者ですが、本作はその中でも頂点にあると言って良いのではないでしょうか。いや本当にすごいですよ。


 そして最後の五作目は、山田正紀の「天保からくり船」。
(…その名を聞いた既読者の複雑な表情が目に浮かぶようです)

 寛永寺炎上により江戸で跳梁を始めた「魔」。その「魔」を払う戦いに巻き込まれた浪人を主人公に据えた本作は、作品のスタイルとしては、短編連作形式の時代ホラー。毎回の事件を解決しつつ、少しずつ作品全体の謎が解き明かされていく形式で、同じ作者の「天動説」を彷彿とさせるものがあります(そういえばあの作品もかなりサプライズ時代小説でした)。

 しかし、その果てに主人公が見たものとは――いやはや、主人公どうよう、ここまで読者までも愕然とさせられる作品はそうはないでしょう。
 そんな馬鹿な! と言っても、それが真実、それ以外にどんな真実もないのであります。

 正直なところ、本作をこのブログで取り上げるべきかはずっと悩んできたのですが、それも最後まで本作をお読みいただければ納得していただけるでしょう。
(ちなみに、amazonの本作のページには信じられないようなネタバレが記載されておりますので、決して未読の方はご覧になられませんよう)


 さて、初めての試みでしたが、いかがでしたでしょうか「サプライズ時代小説」特集。野暮な内容であったかもしれませんが、これを取っ掛かりに、貴方が大いに驚いてくだされば、これに優る喜びはございません。


|

« 「サプライズ時代小説」特集(その一) 実は○○○な作品たち!? | トップページ | 「信長のシェフ」第4巻 姉川の合戦を動かす料理 »

コメント

「寛永無明剣」は私も読みました。「魔界転生」で気の毒な立ち位置だった木村助九郎さんがここでも・・・。まあ隆慶作品でも苦労する役ですし(笑)。

サプライズというか真面目に時代小説のつもりで読んでいたら・・・という作品ですね。最近はミステリーでも、推理物と思って読んでいたらクトゥルー神話だったとかいうのもありますから、読み手も大変です(笑)。

投稿: ジャラル | 2012.06.24 11:36

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/55036275

この記事へのトラックバック一覧です: 「サプライズ時代小説」特集(その二) サプライズにもほどがある作品たち!?:

« 「サプライズ時代小説」特集(その一) 実は○○○な作品たち!? | トップページ | 「信長のシェフ」第4巻 姉川の合戦を動かす料理 »