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2012.07.04

「カミヨミ」第15巻 そして生者の歴史は続く

 明治時代を舞台に、人と、あってはならないものたちとの戦いを描いてきた伝奇漫画「カミヨミ」もついにこの第15巻で完結。
 神代の昔から繰り広げられて来た日輪草薙ノ剣と月輪草薙ノ剣の戦いは、生者と死者との全面対決へと繋がり、最後の決戦が繰り広げられることとなります。

 主人公・天馬の許嫁である菊理の体を奪い、現世へ侵攻せんとする月輪草薙。平将門公の怨念を利用して帝都を封鎖した菊理は、三種の神器を手に入れるとともに、死人の軍団を率いて東京への進軍を開始します。
 一方、一度は破壊されながらも、八俣と飛天坊の尽力で復活した日輪草薙を手にした天馬は、母が率いる零武隊が最終防衛線で死人たちと死闘を繰り広げる中、帝月、瑠璃男とともに菊理が潜む富士山地下に突入。ここに日輪と月輪、二本の神剣が幾たび目かの、そして最後の戦いの時を迎えるのですが――

 もはや物語がここに至れば、描かれるものはごくわずか。それが、日輪と月輪、天馬と菊理の最後の対決であるのは言うまでもありませんが…
 しかし、この長大な物語で戦ってきたのは、天馬だけではありません。母・日明蘭大佐と零武隊の仲間たち、八俣や丸木戸…本作のレギュラー陣も、ラストにふさわしい戦いを繰り広げることになるのですが(零武隊は、結局モブ扱いで終わった人間もいますが…)、しかしそれだけではありません。

 決戦の場で繰り広げられるのは、天馬と菊理、二人の神剣の持ち主だけではありません。同時に展開されるのは、帝月と菊理――二人のカミヨミの戦い。現世と冥界を繋ぐカミヨミ同士の戦いは、半ば当然ながら現世のみならず、冥界にまでその力を及ぼすのですが…
 と、ここで全く予想もしていなかったオールスターキャストの助っ人勢が大集結。
 まさか再び会えると思わなかったこの人物やあの人物の再登場だけでなく、ここまでやるか! 的なとんでもない伏兵まで登場してラストバトルを飾ってくれるのは、派手なもの好きな私としては本当に嬉しい展開であります。
(もっとも、敵の強大さ、巨大さがちょっと見えにくく、助っ人たちの活躍のありがたみが見えにくいのが少々残念ですが…まあ、こういう展開での助っ人は登場するだけでプレゼントであります)


 そして、ついに迎える物語の結末――二転三転した末に最後の戦いは決着し、全ては終わったかのように見えたのですが…
 が、最後の最後に待ち受けていたのは、良く言えばあまりに意外な、悪く言えば身も蓋もないエピローグ。
 …あまりといえばあまりの結末に、最初に読んだときには絶句させられました。

 確かに、とてつもない広がり方をしたとはいえ、本作は異世界を舞台としたファンタジーではなく、あくまでも実際の歴史を踏まえた伝奇物語。その意味では、歴史に対するある種の責任を取らなければいけないのは、むしろ当然ではあるのですが…


 神代の昔からの因縁が解消されたことを明確に示す存在が登場し、そして戦いの後に生き残った者たちによる歴史が続くことを示す…というまとめ方自体は非常に美しかった。
 それだけに、もうちょっとページを取れなかったのかしら、というのが正直な印象なのですが、それはこれ以上言っても仕方ありますまい。

 ラストの着地でちょっと足首を捻った感もありますが、しかし連載8年にも及んだ伝奇活劇もこれにて大団円。描くべきことは全て描かれたと解するべきでしょうし、本作が伝奇漫画として傑作と言うべき作品であったことは、疑いありません。
 結末まで読むことができて本当に良かった、と心から感じます。

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