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2012.07.31

「黒鷺死体宅配便スピンオフ 松岡國男妖怪退治」第2巻 文壇・民俗学・オカルト三題噺

 山崎峰水&大塚英志のコミック「黒鷺死体宅配便」のスピンオフ、「松岡國男妖怪退治」の第2巻であります。
 今回も、明治の文壇と民俗学、そしてオカルトが複雑怪奇に入り乱れた奇譚が展開することになるのですが――

 タイトルロールの松岡國男とは、言うまでもなく日本民俗学の祖であり、そして大塚作品では常連の柳田國男の旧名。
 本作では、その松岡國男と、親友の田山花袋、そして「黒鷺死体宅配便」の主人公の背後霊「やいち」の生前の姿(?)と思われる霊能少年・やいちと、生臭坊主の笹山(これまた原作者の作品では常連のあの人そっくり)の四人が中心となって、明治の日本で起きる怪事件に挑むこととなります。

 この第2巻では、3つのエピソードが収録されていますが、どのエピソードも、史実上の事件や人物と、それを踏まえた怪異や異聞が織り交ぜられ、さながら三題噺の様相を呈しているのが実に楽しい。

 第1話では、後に「遠野物語」の成立に重要な役割を果たす水野葉舟と、有名な戦場怪談である「死なない白い兵隊」(日露戦争で目撃されたかは寡聞にして存じ上げませんが)と催眠術を題材に、日露戦争の二百三高地攻略時の陸軍の高官の連続殺人の謎が。
 第2話では、明治29年の三陸大津波と、花袋の実兄で地震史料を編纂した田山実(実彌登)と、要石を題材に、株に狂奔する人々の姿と、要石の連続破壊事件、さらにある神社での殺人事件が。
 そして第3話では、かの南方熊楠と、柳田といえば(そして原作者の作品でも)お馴染みの山の民、さらには○○○○○○○と××が入り乱れ、奇想天外な山中異界の姿が。
 それぞれ時にコミカルに、時にグロテスクに描かれることとなります。

 いずれも、よくもまあここまで無茶な題材の結びつけ方をするものだ、と妙な感心をしてしまうような物語展開を、キャラの面白さと、何よりも、山崎峰水の――特に怪異描写に関する――作画の確からしさで描き切ってしまうのは、さすがと言うべきでしょう。
 特に第3話など、題材としては盛り込みすぎ、物語もやりすぎなところを、ゲストキャラクターの少女の、あざとさギリギリの造形と、終盤に登場する怪物のユニークにしておそろしいビジュアルで突破してしまった感があり、妙なところで感心させられました。

 しかしながら、その伝奇性・怪奇性の一方で、毎回発生する事件の真相、特に犯人の行動原理の方は、この目的でこの犯行はないだろうと言いたくなるような、どうにも無理があるように感じられるのがどうにも引っかかります。
 これはあるいは、ナマの人間が関わってくるが故の不条理と言うべきものかもしれませんが、その辺りの噛み合わせの悪さは、正直なところ気になります(第2話など、このご時世に実に挑発的な題材なのは良いのですが、それがかけ声倒れに終わっている印象…)。

 設定もキャラクターも大好物だけに、細かいところが気になってしまうのは申し訳ありませんが、スピンオフの枠に留まらない魅力のある作品だけに、贅沢を言いたくなってしまうのであります。

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