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2012.07.15

「風の王国 2 契丹帝国の野望」 激動の時代を生きる者たち

 己が渤海の王族の血を引くことを知った明秀は、契丹からの圧力を受ける渤海への援兵を募るため東日流に帰国。宿敵・耶律突欲の方術に対するため、御靈使を探す。一方、渤海では、契丹との摩擦を避けるため、耶律突欲に芳蘭を輿入れさせんとしていた。国のために受け入れる芳蘭だが、思わぬ波乱が…

 10世紀前半の東日流と渤海を舞台とした大河活劇「風の王国」の第2巻であります。

 遣渤海使の一行に加わって海を渡り、そこで契丹の皇太子にして間諜の耶律突欲を向こうに回しての活劇を繰り広げる中、自分が陰謀で国を追われた渤海王族の生まれと知った明秀。

 己のルーツを知った明秀は、渤海王からの、対契丹への援兵を請う国書を携え、二月ぶりに東日流に帰還することとなります。
 さらに明秀は、優れた方術使いである突欲と戦うため、同様の力を持つ者・御靈使を求めて東日流の三つの聖地――神津野・野辺地・宇曾利を訪れ、そこで数々のこの世ならざるものを垣間見ることに…

 その一方、契丹の侵略に怯える渤海王は、突欲が拉致されかかったという契丹の言いがかりの前に、渤海の港町・麗津を治める大徳信の妹・芳蘭を差し出すことを決定。
 突欲の待つ遼陽まで旅することとなった芳蘭ですが、しかしそこに思わぬ妨害者が現れ、事態は全く予想もしなかった展開を迎えることとなります。


 全10巻を予定しているという本シリーズの第2巻ということで、起承転結でいえばまだ起の部分と言えるかもしれない本作。
 今回は明秀が渤海と東日流を往復するという役回りで、動きが控えめだったせいか、物語の方も前半は比較的落ち着いた印象なのですが、しかし終盤は怒濤の展開であります。

 おそらくは本シリーズのヒロインであろう芳蘭が、宿敵たる突欲の下に輿入れという危機(?)に、まさかこういう時に動くと思われなかった人物が動き、そして本人も気づかぬ心の底が暴かれていく中始まる大殺陣!
 途中、ある意味ネタバレとも言える(この物語の時点からは)未来の史実を記した一文が挿入され、何故ここでそんな野暮を…と思いきや、それが全く別の意味を持って立ち上がってくるラストには、ただただ驚かされました。


 そしてまた、本作の見所はこうした派手な活劇だけに留まりません。
 明秀、芳蘭、突欲…メインとなる人物だけでなく、本作に登場するキャラクターが、皆それぞれに確とした個性を持ち――すなわち、己自身の意志を持ってこの激動の時代に生きている様が、何とも魅力的に映ります。

 この巻で初登場した面々――食えない爺さんぶりを発揮する東日流王・安東高星、まだその能力は未知数ながら激しくキャラが立った御靈使三人娘(?)、契丹を利用して渤海の支配体制を崩そうとする須哩奴夷靺鞨のゲリラたち等々――も、単なる書き割りにならぬ、まさしくその時代に確かに生きた存在として、感じられるのであります。

 そしてそれは、明秀たちの敵役となる契丹側も変わりません。
 この巻のサブタイトルでは悪の帝国のような扱いの契丹ではありますが、しかしその皇帝とその不遇の子たる突欲の会話を見てみれば、彼らの征服行為もまた、幾多の国が生まれ、滅ぶ大陸の熾烈な歴史の流れの中で、何とか生き残ろうとする必死の試みであり――その意味では彼らも明秀と異なることなく、必死に時代を生きた存在であると理解できます。


 しかしそれであったとしても、いやそうだからこそ、彼らは自分たちの存在を賭けて戦わざるを得ません。
 御靈使から、歴史の中の「標」と呼ばれた明秀――彼の存在が、この激動の歴史の中で人々をどこに導くのか。大河ロマンの醍醐味がここにあります。

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