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2012.07.20

「燦 3 土の刃」 三人の少年、ついに出会う

 版元からの原稿の修正指示に悩む圭寿。気晴らしに屋敷の庭に出た彼を襲う暗殺の刃を阻んだのは、燦だった。成り行きから伊月と共に圭寿の警護を行うこととなった燦だが、圭寿の中に得体の知れないものを感じていた。そして圭寿とともに読本問屋を訪れた燦は、そこで意外な存在と出会うのだった。

 最近、私が気になる時代ファンタジー、時代伝奇小説を手に取ると、かなりの確率で解説や推薦の言葉を寄せているあさのあつこの青春伝奇小説「燦」の第3巻が刊行されました。

 田鶴藩の筆頭家老の子で生真面目な少年剣士・伊月、彼の双子の弟であり、田鶴の地に潜む謎の神波一族の一員である燦、そして伊月の主であり、藩主の次男でありながら読本作家になることを憧れる圭寿――
 彼ら三人の少年を巡る物語は、田鶴から江戸へと舞台を移しつつも、さらに動いていくことになります。

 主であり、幼なじみであり、親友でもある圭寿が、兄である藩主の長男の突然の死により次期藩主に就くこととなり、突然慌ただしくなった伊月の周囲。
 圭寿について江戸に出たものの、慣れない環境に戸惑うことばかり。しかも、江戸藩邸では圭寿の命を狙う謎の存在が暗躍し、探索に当たっていた隠し目付が惨殺されることとなります。

 そんな緊迫する事態の中で圭寿を悩ませるのは、余事にあらず、伊月を通じて江戸の版元・須賀屋に見せたところ、書き直しを命じられた読本の原稿のこと。
 なかなかインスピレーションが湧かず呻吟する彼が気晴らしに出た上屋敷の庭で待ち受けていたのは、文字通りの罠!?
 と、冒頭から緩急激しい――いや、お家騒動(と思われる)と、クリエーターの産みの苦しみが同時に描かれる作品をほかには知りません――展開に驚く間もなく、三人の少年を巡る物語は展開していきます。

 そんな本作で注目すべきは、やはり圭寿と燦の出会いでしょう。
 圭寿にとっては、頼もしい伊月の双子の弟。しかし燦にとっては、己の一族の仇である藩主の息子…どう考えても一波乱も二波乱もありそうな関係ですが、しかし野生児・燦も、圭寿のマイペースの前にはたじたじとなってしまうのが面白い。
 その結果、伊月・圭寿・燦と、ほとんと三すくみのような関係が成立することになって、何とも微笑ましいのであります。
(しかし燦の直球すぎる下世話な言葉にはドキッと…)

 しかし、楽しいことばかりではないのが青春。上屋敷の庭にまで潜入してきた謎の敵の正体はいまだわからず、そして得体の知れぬ人物は思いもよらぬ出自を明かすこととなります。
 そしてまた、圭寿の父たる田鶴藩主は、死を黙然として恐るべき怨念とも執念とも言えるものを見せることとなります。
 その言葉に、三人を襲う更なる運命の波乱を感じるのですが――

 しかし、これは声を大にして言いたいのですが、何故今回もこれほど分量が少ないのか。
 三人それぞれのドラマが描かれ、盛り上がってきたところで次巻に続く、というのは、あまりに殺生であります。

 早く、早く続きが読みたい…まんまと作者の掌の上で転がされているような気もしますが、切なる願いなのであります。

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