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2012.07.19

「笑傲江湖」 第7話・第8話 快男児、娘心に惨敗す?

 全40話の第7話・第8話ということで、ようやく1/5まで来たTVドラマ版「笑傲江湖」。その割には今回はあまり大きな動きはないのですが、令狐冲の胸中の方は激動…という展開であります。

 これまでの大暴れが祟り、ついに師である岳不群から面壁一年の謹慎処分を食らってしまった令狐冲。面壁とは達磨大師が少林寺で壁に九年間向かって一語も発さず座禅を組み続けたという故事にちなむものですが、さすがにここでは裏山の洞窟に一年間籠もり、一人修行するというもので、まあだいぶおとなしいものであります。
 しかもその間、彼を慕う弟弟子たちが食べ物(酒まで)を差し入れてくれるし、何よりも大好きな岳霊珊と二人っきりになれる…と、ある意味至れり尽くせりのようですが、何ぞ知らん、これこそが長く続く彼の地獄ロードの始まりだったとは。

 令狐冲は華山派掌門・岳不群の一番弟子であり、岳霊珊は不群の娘。令狐冲は岳霊珊を憎からず思っておりますし、彼女の方も何かと彼に懐いてくる。
 華山派の次代は令狐冲と岳霊珊が結ばれて盤石…というのが周囲も含めて暗黙の了解的な状況でしたが、しかしおそるべしは岳霊珊の破壊的な無邪気さと言うべきでしょうか。

 世間知らずどころか人情(特に男の)にも疎い彼女にとって、令狐冲は今のところ大好きな「兄さん」以上のものではなかったということか、令狐冲が面壁中に林平之と急接近。令狐冲が常に側にいればまた違った結果になったかと思われますが、しかし彼と引き離され、そして不群の命で平之に稽古をつけているうちに…という次第。

 最初は毎日のように洞窟に訪ねにきてくれていた霊珊が、だんだん日を開けるようになり…というのは実にわかりやすい関係の変化ですが、それだけに見ているこちらのおなかが痛くなるような展開です。

 にしても、母から譲られた一対の鴛鴦の短剣の片一方を洞窟で令狐冲に渡す→二人でその短剣を合わせる→洞窟の蝋燭が燃え尽きる描写 という、普通だったらこれアレでしょう! というシチュエーションでありながら、結局は何もなかったっぽいのがおそろしい。おそるべきはおぼこの無神経――
 誠に失礼ながら、私は金庸先生は女性描写が今ひとつ…と思っておりましたが、この辺りの厭なリアリティはなかなかのものだ、と感心いたしました。

 まあ、この辺りの展開は、原作を全て読んだ後に見ると、ある人物の、自然かつ善意を装った邪悪な意志が働いていることがはっきりわかるのですが…
 本作のテーマの一つは、人間の情に正派も魔教もない、正邪の対立など曖昧なものだ――言い換えれば、邪に見えたものが正ともなり、正に見えたものが邪にもなる、という点でありましょう。それがここにも表れていたか、と驚かされた次第です。

 と、令狐冲が一人のたうち回っているうちに、相変わらず五山併合を狙う嵩山派の左冷禅は陰謀を巡らし…と思ったらコスプレした岳不群に妨害されたり、儀琳ちゃんは一人令狐冲の無事を祈り…と思ったら魯智深みたいな生き別れの親父が押しかけてきたりと色々と動きはあったのですが、とりあえずこの辺りは今後効いてくるということで…

 第8話のラストシーン、洞窟の令狐冲の前に謎の人影が現れたことで、物語は再び大きく動き出すこととなります。

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