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2012.07.10

「修羅 加藤段蔵無頼伝」上巻 惡忍、信濃に現る

 越前・越後を騒がせた後、加藤段蔵の姿は信濃善光寺平にあった。飯綱大明神の主・千日太夫のもとに身を寄せた段蔵は、武田家の重臣・香坂昌信に接近し、武田晴信を動かそうとしていた。しかし雑賀衆、服部正成、風魔小太郎、そして復讐鬼・土髑髏と凶獣・邪見羅ら凄腕たちが段蔵を狙い、動き始めた…

 惡忍・加藤段蔵が帰ってきました。
 伊賀と甲賀を同時に敵に回しながら意に介さず、己の欲望のままに周囲を操って乱と戦を巻き起こすピカレスクヒーロー、再びのお目見えであります。

 前作「惡忍 加藤段蔵無頼伝」では、初お目見えとなった段蔵が、越前朝倉家に接近して一向一揆と事を構え、さらに越後に移って長尾家で大騒動を引き起こす様が描かれました。
 その中で、かつて段蔵が伊賀を捨て、悪忍と化す原因を作った服部兄弟を倒した段蔵は、一端は戦国の闇の中に姿を消したのですが――

 もちろん、これで段蔵の戦いが終わるわけではありません。本作において、段蔵は信濃善光寺平に出現。数々の宗教上の聖地であり、越後と甲斐の間で独自の勢力圏となっているこの地を足がかりに、今度は段蔵は武田家に接近することとなります。
 実は本作の冒頭で描かれるのは、第二次川中島の戦い、いわゆる犀川の戦いとも呼ばれる合戦ですが、その陰で糸を引いていたのが実は段蔵、という趣向。
 いやはや、史実においても上杉と武田の間で跳梁したと伝えられる段蔵(もっとも、その結果、信玄の命で討たれたと伝えられておりますが)ですが、まさか川中島の合戦まで動かしてくれるとは思いませんでした。

 前作同様、本作においても周到な事前の準備と巧みな話術、そして何よりも事に及んでの桁外れの胆力で、周囲の人々を利用し、目的とする相手の懐に潜り込んでいく段蔵の悪党ぶりを存分に楽しませていただきました。

 しかし本作の魅力は、もちろんそれだけではありません。段蔵をはじめとする、裏世界の住人たち――忍びたちの死闘も、前作以上にスケールアップ。
 毒物使いのお六と火術使いのお七の弁天姉妹や、小ずるく立ち回る(がいつも段蔵に振り回される)黒駒の座無左ら、ある意味段蔵サイドの面子も健在ですが、しかしそれ以上に今回は敵方が凄まじい。

 段蔵すら利用して邪魔だった二人の兄を排除し、今再び段蔵の首を狙う魔童子・服部半蔵正成。一見騒々しいカブキ者(戦国ドレッドヘア…)ながら底知れぬ実力を持つ雑賀孫一と雑賀衆。段蔵が春日山城から奪ったある物を奪回するために牢獄から解き放たれた軒猿衆の最終兵器・第三の目を操る邪見羅。そして、段蔵と正成に激しい復讐心を燃やす屍人使いの怪人・土髑髏――

 いやはや、段蔵を中心にしてとんでもない面子が集まったもの。まだまだ顔見せ的な印象ではありますが、彼らがそれぞれ誰と戦い、どのような戦いを見せてくれるのか、考えただけで胸が躍ります。


 この上巻では、冒頭の犀川の戦いの場面に至るまでの段蔵たちの姿が描かれますが、さて、戦の火蓋が切られた背後で、忍びたちがどのような闇の戦いを見せてくれるのか。
 下巻で見せてくれるであろう段蔵たちの大暴れが楽しみであります。

(ちなみに、前作ラストで読者を愕然とさせてくれたあの大ネタは本作でも健在。果たしてどこで切り札が切られるか、そちらも色々な意味で期待します)

「修羅 加藤段蔵無頼伝」(海道龍一朗 双葉社) Amazon
修羅(上) 加藤段蔵無頼伝


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