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2012.07.07

「恋は愚かと 姫は、三十一」 姫さま、忠臣蔵の闇を知る

 伊予松山松平家から、堀部安兵衛の書状が発見された。赤穂浪士が吉良上野介を見つけた時、既に殺されていたというその内容の真偽を調べることとなった静湖。しかし芝居小屋の忠臣蔵舞台で、ほぼ同じ状況で吉良役の役者が殺されるという事件が発生。果たして忠臣蔵に秘められた恐るべき秘密とは!?

 「妻は、くノ一」のスピンオフとして開始された「姫は、三十一」の第二弾が刊行されました。
 「妻は」でも活躍した元平戸藩主・松浦静山の娘で、諸般の事情により31歳になっても未婚の静湖姫が、見よう見まねの探偵稼業に挑むというシリーズですが…いやはや、第二弾にして早くも驚愕の内容、何しろ、今回静湖が挑む謎というのは、かの赤穂浪士の討ち入りにまつわる事件なのです。

 かつて本懐を遂げた後、裁定を待つ浪士たちを預かった伊予松山藩松平家で見つかった堀部安兵衛直筆の書状。そこに記されていたのは、かの有名な炭小屋に隠れていた吉良上野介が、既に何者かに殺されていたという、「忠臣蔵」の物語をひっくり返しかねない大秘事でありました。

 その謎解きを、新年から始めた探偵稼業の一環として請け負った静湖ですが、忠臣蔵を「中心ぐらっ」と思い込んでいた彼女の知識では心許ない。
 町の忠臣蔵マニアの若旦那の助言を受けることとなった彼女は、彼と一緒に忠臣蔵の芝居を見ることとなったのですが、しかしその舞台の上で、吉良役の役者兼戯作者が殺されるという事件が発生。しかもその舞台は、実は書状と同じく吉良が既に殺されていたという趣向で――

 と、伝奇もの的にもミステリ的にも実に興味深い展開。
 ここで語られる吉良他殺(?)説は、おそらくは本作オリジナルの内容ですが、しかしそこから忠臣蔵にまつわる、現在でも明確な答が出ていない数々の謎が浮かび上がり、そしてその最たるものである、「何故松の廊下の刃傷が起こったのか?」に収斂していく様は、実にエキサイティングであります。

 そしてその中で、「忠臣蔵」という物語の持つ意味、「忠臣蔵」という物語が今なお残り続ける理由というものにまで切り込んだ考察を加える辺りは、まさに作者の真骨頂でありましょう。(ちなみに作者には、老境にさしかかった最後の四十七士・寺坂吉右衛門を主人公にした、これまた実に作者らしい「罰当て侍」という作品もあります)

 主人公が女性ということもあってか、意識してライトに描こうとしている部分も多々見受けられる作品ではありますが(そしてまたそれが実に楽しいのですが)、しかし作品の根底にあるのは、やはり風野真知雄ならではのエンターテイメント精神であり、歴史観・人間観であると感心した次第です。


 ちなみに本作のある意味タテ糸である、静湖のモテ期問題(?)ですが、前作に登場した6人に加え、本作ではさらに4人の男性が登場。マニアックな若旦那、役者バカ一代、筋肉マニアの若様、そして○○○○○の××というとんでもないキャラも登場して、いやはや本当に先が読めません。

 そしてその一方で、相変わらず静山はユニークな陰謀を巡らしており、幕府側の新たな敵組織も登場。こちらのタテ糸の方も、実に楽しみなのであります。

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