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2012.08.18

「拳侠 黄飛鴻 広東篇」(そのニ) 日本武術最強の刺客たち

 香港映画ファンにはたまらない登場キャラとストーリー展開の「拳侠黄飛鴻 広東編」紹介の続きであります。

 そして何よりもたまらないのは、霍元甲の弟子として、先に名を上げた陳真が登場すること。陳真は架空の人物のはずなのですが、この小説も架空のものなのだから問題ない(?)とばかりに、本作では重厚な師匠に似ぬ若き熱血格闘青年として大暴れ。

 怪鳥音といいボクシング的フットワークといい血をペロッといい、アクション的にはブルース・リー写しなのですが、イラストの早川みどり氏がドニー・イェン顔で描いているので、これは「精武門」の時の俺ブルース状態のドニーさんなのでしょう。


 閑話休題、オールスターキャストは中国武術界だけではありません。「日本篇」でも黄飛鴻を敵視して様々な刺客を送り込んできた内田良平が送り込む新たな刺客三人の顔ぶれもまた恐ろしい。

 その三人とは――
 武田惣角!
 船越義珍!
 そして前田光世!
 大東流合気柔術の武田(前作で登場した植芝盛平の師匠でもあります)、松濤館流唐手の船越、グレイシー柔術の祖である前田…いやはや、現代日本、いや世界の武術の祖とも言える三人であります。

 しかもその三人が待ち受けるのが、内部が十七層に分かれた広州六榕寺花塔。
 途中に待ち受ける三人+αを倒しつつ塔の上を目指すというのは、これはもう言うまでもなく「死亡遊戯」パターンで、シリーズ最後だからもう入れられるものは全て入れてしまおう! と言わんばかりの大盤振る舞いであります。
(ちなみにここで陳真の相手となるのは、下の名前こそ違え日本人格闘家・武田で、ご丁寧にあの額まで持ち込んでいるという、)


 このように、設定だけでもう私のような人間には大喜びの本作なのですが、しかし、それだけ盛りだくさんにするあまり、個々の格闘家、個々の試合の掘り下げは、残念ながらかなり甘いと言わざるを得ません(もともと格闘描写はそれほど精緻なシリーズではありませんが…)
 ラストバトルが不完全燃焼なのも惜しいところであります。。

 物語展開の方も、打擂寨と六榕寺花塔、二つの戦いのみ、と言ってよく、非常にシンプル。前二作で見られたような、清朝末期という時代、そしてそこにおける黄飛鴻の姿という目配りはほとんどないのがまことに残念としか言いようがありません。


 そんな不満は色々とあるものの、しかし、ここまでオールスターキャストで大活劇を展開した作品はほかにはありますまい。ある意味、天下の奇書というべき作品であり――私にとってはやはり愛すべき作品なのです。


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