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2012.08.31

「修羅 加藤段蔵無頼伝」下巻 真の修羅の名は

 加藤段蔵の暗躍により、一触即発となった武田家と長尾家が睨み合う善光寺平。しかしその段蔵への復讐を誓う土髑髏こと服部保俊の凶行は、弁天姉妹や黒駒の座無左らを巻き込む。さらに段蔵の天敵たる師・甲山白雲斎は、段蔵に究極の選択を突きつける。生か死か――忍びたちの死闘の行方は。

 「惡忍 加藤段蔵無頼伝」の続編、「修羅 加藤段蔵無頼伝」の下巻です。
 つい先日、作者が第四次川中島の戦を描いた長編「天佑、我にあり」が文庫化されましたが、この「修羅」は第二次川中島の戦前夜を舞台とした作品であります。

 越前・越後に次いで信濃に現れ、ある目的を秘めて武田家に近づき、まんまと晴信(信玄)を動かして、長尾景虎との戦いに導いた加藤段蔵。
 しかし、その一方で、彼に対する包囲網も徐々に狭まっていきます。

 段蔵が長尾家から奪ったあるモノの奪還のために放たれた凶眼の野生児・邪見羅。段蔵、そして自らの弟の手により瀕死となりながらも復活した魔人・土髑髏こと服部保俊。その保俊らを排除して自分が服部家を継ぐために段蔵を狙う服部正成。そして、自らの弟子に引導を渡すため出陣した段蔵の師・甲山白雲斎――

 いずれ劣らぬ超人たちの存在は、善光寺平に集った段蔵をはじめとするお馴染みの面々を巻き込み、凄まじいバトルロワイヤルが展開されることになります。


 と、ここで先に述べておきますと、実はこの下巻においては、上巻で描かれた――いや、本書の前半部分までで描かれたものも含めて――伏線のほとんどが放置されたまま、物語は幕を閉じることとなります。
(下巻のラストで上巻の冒頭の時間軸ようやく戻ったのにはさすがに驚きました)

 もちろんこれはひとまずの幕、連続ものの中間のエピソードと考えればよいかと思いますが、物語にきっちりとした完成度を求める向きには、正直なところ本作は不満が残る内容でしょう。

 …しかし、それを補って余りあるのが、下巻後半ほとんど全てを使って描かれる、超人忍者バトルのつるべ打ちであります。

 段蔵のみならず、黒駒の座無左や弁天姉妹らにまでその魔手を伸ばす土髑髏。その非道ぶりについに怒りを爆発させた忍びたちが一致団結、雑賀孫一を助っ人に加えて、土髑髏&邪見羅と繰り広げる大決戦は、近年の忍者バトルの白眉と言っても過言ではありますまい。
 ただでさえ個性の固まりのようなキャラクターたちが一つ所に集い、次から次へと秘術奥の手を繰り出す様は、炎に包まれたど派手なバトルフィールドも相まって、まさに圧巻と言うほかありません。
(妖術にしか見えない土髑髏&邪見羅の術にもきっちり理屈がある辺りも含めて、「魁!男塾」を想起)

 その一方で、さしもの段蔵もいささか影が薄い…と思いきや、ラストに待ち受けるのは、彼にとっては最強最悪の敵とも言える師・白雲斎との対決です。
 しかしこの白雲斎、修行の最中に段蔵の無意識下に施した術により、あたかも三蔵法師の緊箍呪の如く彼を金縛りに――いやそれどころか、一瞬のうちに命すら奪うことすら可能。さらに老いたりとはいえ、忍術・体術・武術も超人級と、全く隙のない相手であります。

 さらに白雲斎が、段蔵に対してある命を下したことにより、段蔵はかつてない危機に陥るのですが――前作のラストで描かれた段蔵の大秘密、段蔵の最強の奥の手であるはずのそれが、一転、段蔵を最大の窮地に追い詰めることになるのには、この手があったか! と驚かされました。

 そしてそこから脱出するための乾坤一擲の策が、驚くべき結果を生み――そして語られる本作のタイトル「修羅」の真の意味には、ただただ感嘆するばかりであります。


 段蔵の真の狙いの一端も語られた今、果たして彼の戦いがどこに向かうのか――あるいは、真の最強最悪の敵が生まれたかもしれないラストを読んだ今となっては、この続きを一刻も早く! と願うばかりなのです。

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修羅(下) 加藤段蔵無頼伝


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