「SAMURAI DEEPER KYO」文庫版刊行開始によせて
上条明峰の時代アクション漫画「SAMURAI DEEPER KYO」の文庫化が始まりました。単行本全38巻を、約半分の全18巻で刊行の予定のようです。
ここで改まって取り上げるのも何ですが、この「SAMURAI DEEPER KYO」は、「週刊少年マガジン」で1999年から2006年まで連載されていた作品であります。
時は関ヶ原の戦から四年後、千人斬りの鬼と呼ばれながら、いつしかその姿を消した伝説の男・鬼眼の狂は、脳天気な薬売りの青年・壬生京四郎の体の中に魂を封印され、眠りについていました。
ふとしたことから京四郎と行動を共にすることとなった賞金稼ぎの少女・ゆやは、京四郎、そして魂の封印を解いた狂とともに、復活した織田信長、そして日本の歴史を影から操ってきた壬生一族との戦いに巻き込まれていくことに…
というあらすじだけを見れば、まっとうな(?)時代伝奇活劇に見えますが、徳川秀忠が関西弁の兄ちゃんになって放浪していたり、伊達政宗が仙台を放って狂の仲間になっていたりと、豪快に歴史を解釈(改変?)。
そして作中で繰り広げられるバトルの方も、最初のうちはまだ人間レベルの戦いでしたが、冷気や炎を操るのは序の口の超人バトルが繰り広げられ、ファンの間ではGENKAITOPPAという言葉で表される野放図な世界に突入していくことになります。
…が、これが本当に面白かった。
歴史のアレンジも、史実を完全に変えないレベルに踏みとどまっておりましたし(ちなみにいずれ取り上げようと思っているアニメ版では完全に歴史改変ものになっていくのですが、これはこれで、考えられた結果ではあります)GENKAITOPPAの方は、むしろ少年漫画の華のようなものと言うべきでしょう。
そして何よりも、本作は、一見無敵の俺様主人公が暴れ回る――事実、今回刊行された第1・2巻辺りはまさにそうなのですが――作品のようでいて、登場人物の多くの成長を丹念に描いた作品であります。
人の成長――それは、過去を克服し、そして未来を切り開いていくことと言って良いでしょう。そしてそれは言い換えれば過去から未来に続く時の流れの上での人のポジティブな生き様を描くことであり、それこそが、本作を時代ものとして描く意味である…
というのは牽強付会にもほどがありますが、しかし本作のテーマの一つと思える人の成長――すなわちミクロな歴史――が、マクロな歴史と重ね合わせる形で描かれる点に、私は美しさを感じます。
正直なところ、そうした要素の見られない序盤は――弾け具合の足りなさも含めて――個人的に好みではない内容なのですが、それもまた作品の歴史の一部と言うべきでしょう。
今回の文庫化を機に、もう一度、そうした部分も含めて、本作が描いてきた歴史を読み返してみたいと思っているところです。
「SAMURAI DEEPER KYO」第1巻・第2巻(上条明峰 講談社漫画文庫) 第1巻 Amazon /第2巻 Amazon


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