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2012.09.13

「忍剣花百姫伝 3 時をかける魔鏡」 時と人を繋ぐ絆

 ついに天竜剣の力に目覚め、新たな神宝を求めて近江に向かった捨て丸は、琵琶湖で天空に浮かぶ女神像を目撃する。それは、湖底に眠る神宝・破魔の鏡の力だった。襲来した美女郎を撃退し、鏡の力で時を超えた捨て丸。そこで空天の術者と出会う捨て丸だが、この時代にも魔王の魔手は迫っていた…

 全7巻の第3巻まで来た時代ファンタジー活劇「忍剣花百姫伝」、これまでも怒濤の展開の連続でしたが、ここに来てさらにとてつもない世界に突入していくことになります。

 魔王と美女郎に操られる亡者の群れに襲われた玉風城をかろうじて守った捨て丸こと花百姫。
 彼女は新たな神宝と仲間を探すため、心から慕う忍剣士・霧矢とも別れて少年忍者・こっぱ丸とともに近江国に向かうこととなります。
 そしてにおの海(琵琶湖)で彼女が見たものは、天空に浮かぶ水と戦いの女神サラスヴァティの姿だった…という導入部からして痺れますが、そこからの展開は今回もまた一気呵成であります。

 琵琶湖で活躍する破魔水軍との出会いと意外な人物たちとの再会。天の浮舟に乗った魔剣士・美女郎の襲撃と捨て丸の死闘。
 前巻で美女郎に敗れた玉風城の騎馬隊長・小太郎を救った人物の正体と、好漢・鳴神流山との奇妙な出会い。
 クライマックスでは、ついに姿を現した神宝・破魔の鏡の力で捨て丸は思いもよらぬ世界に飛ばされることになるのですが――


 いやはや、ここから先は、まさか本作の作品世界がこういった方向にまで広がっていくとは! と、あまりにも意外な展開で、ただただ驚かされるばかりであります。
 登場人物の数も多く、独特の設定もまた数多い本作ですが、それが横の広がりであったとすれば、この第3巻のクライマックスで描かれたのは縦の広がりと言うべきでしょうか。

 しかし時代ものでやると、一歩間違えれば作品世界そのものが崩壊しかねないこの仕掛けですが、ここでは違和感なく、いやむしろ物語の輪郭をより明確な形にするものとして感じられます。

 本作の主人公である捨て丸が、十年前に落城した八剣城の主の血を受け継ぎ、そしてその過去を背負って戦うように、本作の登場人物は皆、それぞれに自分自身の過去を背負って生きていく姿が描かれます。
 しかしその過去は決してその人間のみのものではありません。その中で出会った者、別れた者――そんな人々との絆がそこにあるのであり、そしてそれこそが、彼ら彼女たちのパーソナリティを構築しているのであります。
(それは尋常な人と人との関わりとは無縁にすら見える美女郎においてもまた…)

 そう、この第3巻で描かれた展開・仕掛けは、意外なものでありつつも、実は本作でこれまで描かれてきた、時代を超えて繋がっていく人と人の絆の在り方を、角度を変えて(ある意味、より直接的に)描いたものにほかならないのです。

 そしてその絆は、当然のことながら現在進行形で生まれているものであります。
 この巻でも描かれた新たな絆が、果たして物語をどのように動かしていくのか――想像するだけで胸が躍るのです。

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