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2012.09.09

「お江戸ねこぱんち」第5号 半年に一度のお楽しみ

 半年に一度のお楽しみの「お江戸ねこぱんち」も早いもので第五号。丸ごと猫ネタの時代漫画誌というのは、猫好きで時代もの好きには、実に楽しい一冊であります。
 今回も、このブログ的に楽しめた作品を取り上げます。

「猫絵十兵衛御伽草紙 外伝 火事場猫の巻」(永尾まる)
 今回も巻頭を飾るのはもちろんこの作品。元々時代ものである本作ですが、「お江戸ねこぱんち」の方では外伝として少々毛色の変わった作品が掲載されています。
 今回は、以前に掲載された少年時代の十兵衛の物語の続編。猫に育てられた孤児の十兵衛が、まだ売り出し中の絵師・十弦に引き取られるまでが以前の少年編では描かれましたが、今回は、十兵衛が火事場で親とはぐれた猫と出会う一幕であります。

 正面切った(?)人情噺もさることながら、ふとした江戸の風景とそこに行き交う人(と猫)の姿を情感豊かに描くのを得意とする作者らしく、十兵衛が猫を抱えてさまようシーンだけでも胸に来るものがあります。

 もっとも、この猫が本編でもお馴染みのトラ助と似たような柄の猫ということもあって、今までも何度かあった猫の迷子話の延長に見えてしまうのも正直なところではあります。
 しかし、ラスト近くにあるキャラクターを出すことで、本作の一つのテーマとも言える人間と妖の共存(の仕方)を語るのもうまく、やはり楽しめる作品であることは間違いないでしょう。


「猫暦」(ねこしみず美濃)
 第四号から連載が始まった作品の第二話。天文に興味を持つようになった少女・おえいと流行らない剣術道場を営むその父、そして彼女を嫁にするためにやってきた猫又のナツメを巡る物語であります。

 第一話ではおえいが天文に興味を抱くようになる様が描かれましたが、今回はどちらかというとメインになるのは父親の心情。
 亡き妻の忘れ形見である娘の成長を楽しみに思う気持ちと、自らの夢である武者修行に出たいと思う気持ちの間で揺れ動く気持ちを、本作では「惑い星」(すなわち惑星)と喩えるのですが――

 フラフラと惑っているようで、しかしその道を外れることのない存在として彼を――そして彼が地球だとすればおえいを月として――描くのが実にうまい。
 どうやら毎回登場するらしい、ナツメの妖力でおえいが一時大人の姿になる(魔法少女の如く)シーンも、なかなかうまい使い所であったと思います。

 さらに言えば、前回大人になったおえいと出会った司天台の男・勘解由が、(大人姿の彼女と同一人物とは知らず)おえいが地動説を口にするのに驚くというヒキの部分も面白く、正直なところ、次回は半年後というのが待ちきれない気分であります。


「忍者しょぼにゃん」(きっか)
 しょぼんとした気弱な猫・しょぼにゃんの日常を描く四コマ…の時代劇編。実は好きなんですよ、「しょぼにゃん」!

 今回は児雷也に憧れたしょぼにゃんが、口寄せの術でガマを呼び出すも(いつものごとく)大惨事に…という、相変わらず何気にヒドイ展開を可愛らしく見せてしまう本作のマジックは健在でありました。
(ガマを呼び出す術、「口寄せ」というのだろうか…というのはともかく)


 その他、こちらの趣味的にはロマンスなのか怪談なのかコメディなのかユルい境界線がちょっと楽しい、ほしのなつみ「明け六つの猫」、ある意味定番の猫又話に可愛らしい猫侍(雌かと思ったら雄でショック)を投入することでちょっと面白いアクセントとなった須田翔子「今宵は猫月夜」が目に止まったところ。

 個人的には、これまで毎回クオリティの高い作品で楽しませてくれた蜜子の作品が掲載されていなかったのが大いに不満ではあるのですが、それなりに楽しませてくれた一冊であります。

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