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2012.09.18

「るろうに剣心 銀幕草紙変」 もうひとつの劇場版るろうに剣心

 どうやら劇場版の人気も上々のようでまずはめでたい「るろうに剣心」、その劇場版のノベライゼーションとも言える作品「るろうに剣心 銀幕草紙変」が発売されました。作者は黒碕薫――原作者夫人であり、数々の和月作品の設定協力を務めてきた、ある意味最も原作者に近い人物による小説版であります。

 と、初めに恥を忍んで白状しますと、私はまだ劇場版を見ていないので、劇場版と比較して本作の内容を云々はできません。そのため、主に原作と比較しての感想となりますが、それを一言で表せば、想像以上に面白かった、となりますでしょうか。

 本作のベースとなっているのは原作初期の武田観柳編と鵜堂刃衛編。観柳のエピソードから御庭番衆を除いて、その代わりに刃衛を入れた(そして斎藤一や、と言えばわかりやすいでしょうか。

 正直なところ、最初はちょっと地味では…と思ったのですが、実際に読んでみると、これはこれでまとまりが良いと感じます。
 時代に取り残された江戸の遺物的存在という意味だけ見れば、御庭番衆と新選組は置換可能と思えますし、原作者も当初(連載が長く続かなければ)刃衛のエピソードをラストに想定していたというだけあって、テーマ的にも綺麗に落ち着きます。

 なるほど、原作初期(≒京都編より前)を一本にまとめれば、こういう形になるのか…と感心した次第です。
 もちろん、それだけでは単なるダイジェストになりかねませんが、この小説版独自(であろう)要素があるのもファンにとっては嬉しい。
 刃衛のデザインを完全版の再筆設定ベースの刃を手に刺したものとしたり、観柳の部下として外印を同じく再筆ベースから更にアレンジして、御庭番衆の黒子になるはずだった、戦争を知らない、無邪気に戦争を望む青年として設定しているのが目を引きます。

 また、原作ではほとんど設定のみだった薫の父・神谷越路郎を、剣心とは別のベクトルの不殺の信念の持ち主として西南戦争を戦った男として描くことで、薫の剣心に対する想いにも、神谷流道場を狙う観柳の行動にも裏付けを与えている(さらには斎藤との関連も用意している)のも、面白いところです。

 ちなみに観柳、原作では単なる大馬鹿の悪党キャラでしたが、こちらでは(馬鹿は馬鹿なりに)筋が通った理念があるのもちょっと面白く感じました。


 もちろん、全体を通してみると粗は皆無ではありません。
 観柳(外印)の計画の杜撰さ(いくら何でも斎藤を無警戒に受け入れるのはいただけない)や、左之助の存在感の軽さなど――これはあとがきを見るに相当悩まれたようですが――すっきりしない部分はありますし、考証的にもどうなのかな、と思う部分がないわけではありません。

 それでもなお、本作は原作のリライトとして――作者に最も近い人間の手になるという点で、アニメ版や劇場版とはまた違った意味の、もう一つの「るろうに剣心」として楽しめることは間違いありません。
 そしてその作者自身も、並行して「キネマ版」というリライトを、また本作の内容とは異なる形で展開していることを考えると、「るろうに剣心」という作品を考える上で、何とも興味深い作品に感じるのであります。


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コメント

映画も好評で早くも続編は前後編とか3部作でとかの話もあるようで良かったです。続編だと当然京都編! 問題は佐藤健君を始めとするキャストのスケジュール確保だそうです(笑)。

投稿: ジャラル | 2012.09.18 20:43

ジャラル様:
企画は水物ですが、本当に動いてくれたら嬉しいですね。
京都編だったら色々と派手なことができそうで楽しみです。

投稿: 三田主水 | 2012.10.08 21:24

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