« 「笑傲江湖」 第33集「妖人 東方不敗」 | トップページ | 「幕府検死官玄庵 斬心」 反逆医が惚れた姫 »

2012.10.17

「戦国SAGA 風魔風神伝」第1巻 風神の静と動を見よ

 連載開始時にも取り上げましたが、宮本昌孝の「風魔」をかわのいちろうが漫画化した「戦国SAGA 風魔風神伝」、待望の第1巻が発売されました。

 物語の始まりは戦国時代末期、秀吉の天下統一が進み、徐々に北条家包囲網が狭まっている時代。
 北条家に仕えてきた風魔一族の頭領(この第1巻の時点では頭領の子)・風間小太郎が、自分たちの自由と独立のために活躍する爽快な冒険活劇譚であります。

 この第1巻に収録されたエピソードは、ちょうど原作の第2章までで、原作全体でいえば、まだまだプロローグの部分。
 もはや開戦直前となった北条と豊臣、両家の対立の裏側で展開される謀略戦の様と、その中に登場する、小太郎をはじめとする主要キャラクターの顔見せが、この第1巻では描かれることになります。

 さて、物語展開的には、この「風魔風神伝」は、原作にかなり忠実な内容であります。
 小太郎と最後の足利公方・氏姫の交流、風魔の裏切り者・湛光風車の暗躍、小太郎を一族の仇と狙う猿飛の術の遣い手・唐沢玄蕃の登場、そして風車の謀略によりついに開戦する北条と豊臣――
 この巻で描かれる事件の数々は、原作でも描かれたものを、ほとんどそのままビジュアル化した印象があります。

 それでは、原作読者にとって、本作を読む必要がない、読んでも目新しさはないかと言えば、それはもちろん、「否」と声を大にして言わせていただきます。

 何しろ本作の漫画化を担当したかわのいちろうは、「赤鴉」「忍歌」と、時代伝奇アクションを描かせれば、当代屈指の描き手。
 小太郎をはじめとして見事にビジュアライズされたキャラクターたちが、縦横無尽にページの中を飛び交う――それでいて少しも情報過多で読みにくいということはない――画の一つ一つは、原作のイメージを損なうことなく、それでいてなるほどこういう描き方になるのか、と原作読者にとっても実に新鮮に感じられるのであります。
(むしろ原作を読んでいるからこそ、その「翻訳」の巧みさに驚かされるのかも…)

 特に素晴らしいのは、主人公たる小太郎のアクションでしょう。
 身の丈八尺を超えるような、現代であっても規格外、戦国時代にあってはまさに鬼神と言うべき小太郎の巨体。その肉体の――そして彼の精神の――厚さを感じさせる「静」のビジュアルが、一度彼が行動に移った途端、目にもとまらぬ凄まじい速度と破壊力を持った「動」のビジュアルに変じる、その凄まじい落差は、見事と言うほかありません。

 昨年辺りから、相次いで漫画化されている宮本作品。既に完結した長谷川哲也画の「陣借り平助」、来月単行本第1巻が刊行される東冬画の「大樹 剣豪将軍義輝」と、原作も一級、描き手も実力派ばかりで、漫画化に恵まれた作家であると感じます(あるいはそれは、作者の経歴に関係するかもしれませんが…)

 そして本作もまた、こちらの期待を裏切らない見事な漫画化であることは、上に述べた通りであります。
 この先、いよいよ本格化する小太郎の活躍を期待するなという方が、無理というものでしょう。


 ちなみに、この第1巻に付された原作者のあとがきで、「隠密剣士」に登場した風魔小太郎のことが触れられているのですが、実はかわのいちろうは、まさにこの「隠密剣士」を漫画化し、そしてその中で風魔小太郎を大暴れさせているというのは、面白い因縁と言うべきでしょうか。

「戦国SAGA 風魔風神伝」第1巻(かわのいちろう&宮本昌孝他 小学館クリエイティブヒーローズコミックス) Amazon
戦国SAGA 風魔風神伝(1) (ヒーローズコミックス)


関連記事
 「風魔」 小太郎が往く自由の中道
 「戦国SAGA 風魔風神伝」 ヒーローズに風神見参!

|

« 「笑傲江湖」 第33集「妖人 東方不敗」 | トップページ | 「幕府検死官玄庵 斬心」 反逆医が惚れた姫 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/55889750

この記事へのトラックバック一覧です: 「戦国SAGA 風魔風神伝」第1巻 風神の静と動を見よ:

« 「笑傲江湖」 第33集「妖人 東方不敗」 | トップページ | 「幕府検死官玄庵 斬心」 反逆医が惚れた姫 »