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2012.11.14

「大樹 剣豪将軍義輝」第1巻 剣豪将軍、漫画にて復活

 今年は宮本昌孝の作品が相次いでコミック化されました。「陣借り平助」「風魔」――そして「剣豪将軍義輝」。今回第1巻が刊行された本作は、その「剣豪将軍義輝」の漫画版であります。

 原作者のファンであれば言うまでもなくご存じかと思いますが、「剣豪将軍義輝」は、宮本昌孝の初の本格時代小説であり、代表作であります(正確には、本作に先行する時代ものとしては早川書房のYA向け雑誌で連載された「旗本花咲男」がありますが…)。

 本作の主人公は、室町幕府第13代将軍・足利義輝。歴史好き以外には今ひとつ馴染みの薄い人物かもしれませんが、将軍の権威が失墜し続けてきた中、信長・謙信・信玄といった錚々たる戦国大名と渡り合い、将軍の威信回復に努めた人物であります。
 しかし時代もの好きとしては、この義輝は、上泉伊勢守や塚原卜伝に学んで「一の太刀」を授けられたと言われる、まさに剣豪将軍。その悲劇的かつ壮絶な最期も含めて、戦国史において決して忘れられない人物の一人であります。

 さて、「剣豪将軍義輝」はこの義輝の一代記を、ドラマ性・伝奇性豊かに描き出した大作であり、この「大樹」は、その漫画版であります。
 この第1巻には、原作のまだ序盤――わずか12歳の義輝が初陣で敗走する途中に「剣豪」の卓越した技を目撃し、そして終生のライバルである熊鷹と対面。そしてヒロイン真羽と出会い、何者かに拐かされた彼女を求めて、妓楼に殴り込みをかける辺りまでが収録されています。

 本作の作画を担当するのは、同じ「COMICリュウ」誌で「嵐ノ花 叢ノ歌」を連載してきた(今は休載扱いでしょうか)東冬であり、画力においては屈指のものを持つ作家です。
 しかしながら、「嵐ノ花 叢ノ歌」は日中戦争期の大陸を舞台とした壮大な伝奇活劇、本作とあまりにも方向性が異なるため、果たしてどのようなものとなるか…と危惧がないわけでもなかったのですが、もちろんそれは杞憂でありました。

 まず表紙からして、咲き誇る藤の大樹――大樹=将軍と、義輝の初名・義藤とかけたものでしょう――の下に凛々しく立つ義輝の姿に目を引き寄せられますが、単行本を開いた巻頭では原作ファンであればあっと驚くあのシーンを先取りでカラー化。
 続く本編の方も、義輝や熊鷹、真羽をはじめとする登場人物たちを原作のイメージを崩さずに、それでいて漫画としてのアレンジを加えてビジュアル化しているのに感心いたします(個人的には梅花さんの可愛らしさと鯉九郎さんのシブ格好良さが嬉しい)。

 そしてもちろん、本作を描く上では避けて通れない剣戟描写もお見事。この第1巻では、冒頭とラストにおいて、スタイリッシュかつ迫力ある剣戟シーンが描かれておりますが、この辺り、時代ものプロパー「ではない」作家ならではの斬新さがあるかと思います。


 さて、上で述べたとおり、この第1巻の時点では、原作の序盤が描かれたところ。厚手の文庫本で全3巻という原作から考えると、まだまだ先は長いのですが――しかしこの先、楽しみに待っても大丈夫そうな、そんな漫画化であります。

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