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2012.11.01

「おコン! 狐闇 夢幻組あやかし始末帖 百鬼夜行に花吹雪2」 敵は30万狐軍!? 飛べ竜之進!

 「夢幻組」の組頭・月影竜之進が察知した妖狐たちの人間界侵略。30万を超える狐族が、江戸を狙っているというのだ。時を同じくして、夢幻組のメンバーで稲荷憑きの娘・お紺が行方不明となった。果たして彼女は狐族のスパイなのか? 戦力を欠いた夢幻組に三大妖怪が襲いかかる! 江戸の運命や如何に!?

 江戸のゴーストハンター、いや江戸の魔術戦士と言うべきでしょうか、江戸を脅かす妖怪や怪異と対決する「夢幻組」の第二の冒険が発売されました。

 普段は黒眼鏡姿でうだつのあがらない同心、実は霊刀・村雨と数々の霊能力を振るう月影竜之進を組頭に、士農工商+αのいずれも一芸に秀でたメンバーから構成された「夢幻組」。
 前作では尾張大納言に取り憑いた大妖・牙御前と対決した夢幻組ですが、本作の敵は、黒の左大臣なる妖狐操る3匹の大妖怪、そして狐軍団30万であります。

 その戦いの前兆となったのは将軍吉宗の生母・浄円院を襲った譫妄状態。彼女が口にしたという謎めいた言葉や和歌の数々に、竜之進は妖狐たちが江戸を狙っていることを読み取ります(この辺り、実に作者らしい伝奇ホラータッチの描写が嬉しい)。
 早速江戸の防備に走る夢幻組の面々ですが、気にかかるのは、メンバーの一人であるお紺が行方不明となっていること。彼女は実は稲荷憑き、稲荷と言えばもちろん付きものは狐――そしてその悪い予感を裏付けるように、彼女の前に、同輩を名乗る狐族の男が現れることとなります。

 かくて夢幻組分裂の危機の中、黒の左大臣が叩きつけてきた挑戦状に則り、魔界から現れる三つの大妖怪。果たして竜之進と夢幻組は大妖怪を倒し、妖狐の大群から江戸を、江戸城を守ることができるのか!? というわけで、前作以上の大バトルがここに繰り広げられることとなります。

 前作の紹介でも述べたように、いまや文庫書き下ろし時代小説界では一つのサブジャンルとなった感のある妖怪もの。
 その中でも本作は、おそらくは最強の武闘派、襲い来る奇怪な妖怪たちを、竜之進たちが時に武の力で、時に知恵と勇気で痛快に撃破していく様は、長きにわたって伝奇・ホラーエンターテイメントの世界で活躍してきた作者ならでは、と申せましょう。

 特に終盤、敵の主力の妖狐軍が江戸城に迫る中、敵の陰謀で浅草に誘き出された竜之進が、如何にして江戸城に駆けつけるのか? というシーンは、本作から読む方であればあまりのことにひっくり返るでしょうし、前作からの読者であれば「来るか…来るか…来た!!」と快哉を叫ぶこと必至のクライマックスであります。

 一方、シリアスな部分と同時に、コミカルな味付けも忘れていないのが本作。ホラーと同時に、ナンセンス・コメディのジャンルでも名作を発表してきた作者らしく、緊迫感溢れるシーンで、登場人物がすっとぼけた会話をかわすなど、緩急巧みな使い分けと言うべきでしょう。

 もっとも――これはギャグの意味もあると思うのですが――登場人物の台詞で、複雑な状況や概念をほとんど全て説明してしまうスタイルには、好き嫌いが分かれるかもしれませんが…


 前作の紹介でも触れましたが、正直なところ前作の段階では、キャラクター描写やシリアスとギャグの使い分けなどにまだぎこちない部分が感じられました。
 これはシリーズ第1弾ということもあってでしょうか、本作においてはかなり解消された印象があります。特に竜之進とお紺以外の夢幻組の面々――妖怪等の知識に長けた郷士・柴三郎、力自慢の宮大工・太郎吉、裏社会に通じ礫術の達人の香具師・半蔵、そして前作から加わった仔狸の黒右衛門――にもそれぞれの出番があるのは、特に本作のような作品においては好印象であります。

 もっとも、この作者であれば、まだまだ先がある、もっともっと凄いものが描ける、というのもまた、昔からのファンとしての正直な印象でもあります。

 いよいよノってきた感のある本シリーズ、第3弾では果たして何を見せてくれるのか――楽しみにしていて間違いはないでしょう。

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コメント

30万対5という、「300」も「のぼうの城」も超えた圧倒的人数比をどうするのか、と思ってました。そして、「そうきましたか!」、納得も得心もしてしまいましたね。

投稿: ちゅるふ | 2012.11.04 18:27

ちゅるふ様:
いやーさすがに終盤は心配になって残りページ数を気にしてしまいました。ちょっとずるい気もしますが、なるほど…であります

投稿: 三田主水 | 2012.11.24 23:33

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