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2012.11.11

「『陰陽師』のすべて」 25年を振り返る充実のガイドブック

 先日、「陰陽師 酔月ノ巻」の紹介でも触れましたが、夢枕獏の「陰陽師」シリーズは今年で25周年。それを記念して、「『陰陽師』のすべて」と題したムックが刊行されました。

 インタビュー、対談、作品の舞台となった場所の案内、単行本未収録作品の収録、エピソード総解説、陰陽師&安倍晴明ブックガイドと、いわゆるガイド本的な内容となっている本書。
 正直なところ、ガイド本についてはしばしば痛い目に遭っているのですが(特に漫画のガイド本)、本書はかなりの充実ぶりで、大いに楽しませていただきました。

 やはりファンとしてはまず気になるのは単行本未収録作品だと思いますが、こちらはアンソロジーに収録された「花の下に立つ女」を掲載。
 博雅が夜笛を吹くたびに現れる謎の女性を描いた本作は、分量的にも内容的にも、短編というよりも小品と言うべきものかと思いますが、風景描写の美しさといい、儚くも美しい結末といい、(シリーズのお約束からは外れつつも)実に「陰陽師」的作品で、嬉しいボーナストラックであります。

 また、個人的に面白かったのがエピソード総解説。読んで字の如く、シリーズの長短編全作品の解説なのですが、その項目が面白いのです。
 というのも本コーナー、あらすじ、キーワード、名台詞・名フレーズが記載されているのはまず当然として、各エピソードで起きた怪異の内容、そして晴明への依頼人も記載されているのです。
 この辺り、ほとんどミステリものののエピソードガイド的で、少々意外にも見えますが、しかし本作の源流の一つにシャーロック・ホームズものがあることを思えば、頷けるものです。
(さらに、エピソードの舞台となった季節が記載されているのは、これは実に「陰陽師」らしい)

 また、解説に合わせて作者自薦のベスト11が挙げられているのも面白い。発表時期的にばらけたチョイスとなっているのが個人的には少々意外に感じましたが、しかしさすがにこの結果には納得。自分が大好きなエピソードが選ばれているのは、やはり嬉しいものです。

 もう一つ見逃せないのは、細谷正充氏によるブックガイド。「陰陽師」に先行する作品、そして以後に大量に発表された陰陽師ものをほとんど総ざらえした内容は、充実の一言。
 大いに楽しみつつも、妬み半分に突っ込めるところはないかと探してみたりもしたのですが、ほとんど隙のないラインナップで、他の陰陽師ものに興味を持った方にとってはマストと言ってもよい内容かと思います。


 実のところ、本書の何割かは再録(上記のブックガイドも含めて)ではあるのですが、しかし、これだけの内容を一冊にまとめてくれたのはやはりありがたいお話。
 「陰陽師」ファンであれば手にとってまず損はない一冊ではないかと考える次第です。

「『陰陽師』のすべて」(夢枕獏 文春MOOK) Amazon


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