「新・水滸伝」第3巻 好漢、花石綱に挑むも…
現代の中国でリライトされた水滸伝、「水滸新伝」の翻訳である「新・水滸伝」の第3巻であります。
第2巻あたりからオリジナル路線に突入した本作ですが、この第3巻でも、これまでにない展開が待ち受けています。
原典をベースとしつつも、オリジナル展開を多数導入している本作ですが、この第3巻も実に全体の四分の三が原典にない完全にオリジナルエピソード。
冒頭の四分の一は、原典でいういわゆる江州編。江州に流刑となった宋江がそこで騒動に巻き込まれ、江州の好漢、そして梁山泊の面々が大暴れする、お馴染みのエピソードであります。
本作ではその後に李逵の帰郷、そして(原典ではかなり後の)史進の梁山泊入りが描かれますが、その後は、花石綱にまつわる物語が展開されることとなります。
花石綱とは、時の徽宗皇帝が自らの庭園のために、江南地方から集めた珍花・名木・奇石であり、またそれを集め、運ぶこと自体を指すものであり、史実上の出来事であります。
この花石綱、単に集めるだけならばまだ良いのですが、それを担当した高官・朱面が皇帝の命をいいことに、各地で木石を奪って庶民を労役に使い、己は私腹を肥やし…とやりたい放題。
ついにはそれに対する不満が、原典の終盤にも登場する方臘の乱として噴出し、結果的に北宋の寿命を縮めることとなったものです。
原典においては、楊志や孟康の前歴に絡むものとして軽く触れられた他は、ほとんど語られなかった花石綱が、本作においては大々的に絡んでくることとなります。
と、その辺りを含めて、今回も原典との主な相違点を列挙しましょう。
・原典での李立の役割は童威が、張横は童猛が、穆弘は周通が、李俊は張横が担当(ややこしい)。張順は変わらず。
・魯智深・楊志・武松ら二竜山組は江州編のすぐ後に梁山泊入り。史進もその後。
・楽和は王都尉が妻に目を付けたことをきっかけに都から逃亡。
・董平は楽和の従兄弟。呼延灼の父に見いだされ、宣賛の下で軍務につく。
・呼延灼は若き軍人。張清・董平と義兄弟となる。
・張清は岳父が花石綱によって命を奪われ、反抗したことで投獄、それを救おうとした裴宣も罪を着せられる。
・穆弘と馬麟は花石綱に反抗する義賊。以前の生辰綱を奪ったのは穆弘。
・金大堅と段景住は常州の住人で花石綱に巻き込まれ張清と裴宣を救う。
・鄭天寿は花石綱のために妻子を失い、単身復讐のために奸臣たちを討つ。
・焦挺は李袞の元弟子の軽功使い。意外な形で呼延灼の父を救う。
・石秀は燕青の兄弟子。人助けをしていたところで呼延灼に見いだされる。
・関勝とカク思文は呼延灼の目に留まって軍官に推薦される。
・董平は皇帝の御前試合で遼の猛将を破り、一躍英雄に。しかし童貫らに陥れられたところを李帥帥に救われる。
――この通り、ざっと挙げただけでもかなりの違い。
上に述べたとおり、花石綱にまつわるエピソードがかなりの割合を占めますが、そこで中心となるのは張清と鄭天寿の存在。
花石綱を担当する悪徳官吏たちによって鄭天寿は妻子を失い、妻を得たばかりの張清(ちなみに瓊英は登場せず)は、妻の実家の財産が全て奪われた末に岳父を殺されるという悲劇に遭い、それが物語を動かしていくことになります。
なるほど、こうしてみるとむしろ原典になかった方が不思議なくらいの組み合わせに感じられるのですが…それと物語の面白さが無関係というのがなんとも悲しい。
正直なところ、題材はともかく、物語のパターンとしては、第2巻に収録された項充のエピソードとほとんど全く同じ。簡単に言ってしまえば、原典の柴進受難のパターンなのですが、あれを延々と引き延ばしてみせられるのはあまり楽しいものではありません。
人物描写も(特に悪人については)紋切り型のものばかりで、それがまた物語のワンパターンぶりに拍車をかけて感じられます。
(その悪い意味のインパクトは、なぜ鄭天寿や張清がこういう設定となったのか、という疑問がどこかに消えてしまうほど…)
もっとも、この巻の終盤から始まる対遼戦のエピソードは、今のところこれまでのオリジナルエピソードのワンパターンぶりとはいささか異なる印象。
主役となるのが董平と呼延灼という、官軍側の、それもそれなりの地位にある人物なのが大きいのかもしれませんが、焦挺の登場の仕方なのは(本作にしては)凝ったもので、少々驚かされました。
何よりも、董平が颯爽たる若武者として大活躍する嬉しく、というのはまあさておき…
何はともあれ物語も後半戦。はたして原典との整合性がこの先どのように取られていくのか、キャラクターがどのようにアレンジされていくのか、何だかんだと言いつつ楽しんでいるところです。
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