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2012.11.06

「戦都の陰陽師 騒乱ノ奈良編」 陰陽師と忍びの死闘、再び…

 魔を滅ぼす霊剣・速秋津比売の剣を出雲から持ち帰り、京を救った土御門光子。しかし魔天の四天狗を名乗る魔物が土御門家を襲撃、剣が奪われてしまう。剣が松永久秀の多聞山城にあることを知った光子は、再び疾風ら七人の伊賀忍者とともに奈良に向かう。しかし久秀の背後には魔人・果心居士の姿が――

 「忍びの森」で時代伝奇ファン・忍者ファンを驚かせ、続く「戦都の陰陽師」でも読者を唸らせた武内涼の第3作は、「戦都の陰陽師」の続編であります。
 松永久秀が東大寺の大仏を焼いたことにより生じたほころびから現世に侵入した強大な天魔に対し、かつて安倍晴明が封じた速秋津比売の剣を出雲から持ち帰り、天魔を封じた土御門家の姫・光子。
 彼女と、彼女を守る七人の伊賀忍者の戦いが、ここに再び始まります。

 正しき心で使えばあらゆる魔を討つものの、悪しき心で使えば魔物はおろか、この宇宙の全てを焼き尽くすという霊剣。光子たちがこの霊剣の新たな封印先を探していた矢先に、新たなる敵が出現することになります。。
 その敵とは、波旬坊・松明丸・立烏帽子・是害坊――魔天の四天狗。霊剣が安置されていた土御門家を襲った四天狗は、光子の祖父にして陰陽道の達人・有春を激闘の果てに深傷を負わせ、霊剣を何処かに持ち去ってしまいます。

 四天狗の背後にいたのは、裏蘆屋の妖術を操る謎の魔人・果心居士、そして彼と結んだ松永久秀――光子と七人の忍者は、霊剣が運ばれた多聞山城に向かいますが、そこは今まさに松永と三好三人衆、そして筒井順慶の戦いが繰り広げられる激戦地。
 古都が戦火に包まれ、果心による妖魔が徘徊する中、光子たちは多聞山城への潜入に挑むことになります。


 「忍びの森」ではトーナメントバトル、「戦都の陰陽師」では山野を逃走しながらのゲリラ戦と、それぞれの形で忍者の戦いを描いてきた作者ですが、本作で描かれるのは警戒厳重な城砦への潜入。ある意味忍者の本道とも言えるミッションであります。

 もちろん、光子や疾風たちの戦いが、潜入だけですむはずもありません。敵は当然、光子たちが奪還に訪れることを察知して、松永の軍兵、そして果心配下の外法僧たちを放って警戒を強めます。
 かくて、忍術・武術・陰陽術・妖術がここに再び繰り広げられるわけですが、こちらはもう安心のクオリティと言うべきでしょう。
 人知の限りを尽くした秘術と、物理法則すら無視した魔界の力、両者のぶつかり合いを描く作品は決して少なくありません。
 しかし、時に執拗に、時に大胆な省略を交えて描く作者独特の描写は、戦争というある意味最も現実的な行為と、その中で展開される超常の争闘を、違和感なく融合していると感じられます。


 もっとも――本作に対する不満は少なくはありません。

 何しろ本作は展開が遅い。潜入作戦には周到な準備が必要とは言っても、本格的に動き出すのが本当に終盤であり――そしてこれは少々ネタバレではありますが――一応の締めくくりはあるものの、物語は真の決着を見ていないというのは、やはりいかがなものかと感じます。
 これには、閉鎖空間でのトーナメントバトルや、敵に追われながらの逃走行に比べれば、本作の、待ち構える敵のもとに潜入するというシチュエーションに、ある意味戦いの必然性・緊急性が少ないことはあるかもしれませんが…

 さらにこうした展開の下では、作者の独特のリズム感を持つ文体、そして作中世界と現代を照らし合わせる形で描き出す作者独自の思想・主張が、より目立って見えることも事実であり、正直なところ、合わない方には合わないでしょう。


 この点どのように消化・昇華されることとなるのか――その辺りも含めて、まず間違いなく発表されるであろうシリーズ第3作目が待たれる次第です。

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