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2012.12.02

「猿飛三世」 第8回「天の巻」

 生きて無地帰ってきた佐助。ついに弾圧されていた牢人たちが決起する中、鬼丸と主膳は北倉のもとに乗り込み、高波藩から手を引かせることに成功する。一方佐助は怒りに燃える伴蔵と対決、壮絶な戦いの末、ついに伴蔵を倒すのだった。全てが終わり、旅立つ佐助をお市は笑顔で見送るのだった(完)

 全8回の「猿飛三世」もこれで最終回。まさに大団円と言える内容だったのですが…

 前回、胸に手裏剣を受けて水落ちした佐助は、懐に入れていた秘伝の巻物で助かりました、という定番パターン復活。
 そして、北倉の名前入り割符も手に入って反撃準備完了と思いきや、鬼丸は北倉を妥当するベストタイミングである「天」の時を待つと静観の構え――とこれはいいのですが、気になったのはこの後。佐助は鬼丸から、秘伝七術を伝授されるのです。

 え、佐助が毎回会得してきた秘伝は一体…
確かに流れ的に言えば、父子の和解の姿として、決戦直前のパワーアップとしてアリなのだと思いますが、これまで佐助が佐助なりに解釈し、自得してきたものはなんだったのか? ここに来て全てひっくり返されたような気分になりました。(これまで佐助が目覚めてきたのは秘伝の心で、今回伝授されたのは術という解釈なのかもしれませんが…)

 さて、そうこうしているあいだに所司代の牢人狩りはエスカレートを続け、ついに牢人たちは決起。「上」の訴状を手に強訴に立ち上がります。牢人の場合も強訴と言うのか、それ以前に所司代の暴戻を誰に訴えるというのか、大いに気になったのですが、それはまだいい(良くない)。
 これを「天」の機と見て、ついに鬼丸と梅宮主膳は北倉のもとに乗り込むのですが…決起した牢人たち、そしてその家族たちも、半ばヤケを起こした所司代の鉄砲隊にバタバタと打ち倒されていきます。

 この後に佐助たちが駆けつけて牢人たちを救出するのですが、明らかに助からなかった人間もいるとしか思えない描写で、ここがまた大いにすっきりしないところ。
 これではまるで、「天」の時として利用するために牢人たちが犠牲になったとしか思えず、せめて鉄砲が撃たれる寸前に佐助たちが駆けつけるという展開でも良かったのではないか、と思った次第(後の佐助の台詞にも関わってくるので…)


 と、最終回だというのに文句ばかりになってしまいましたが、最後の最後に待つ佐助と伴蔵のラストバトルは全く文句のない内容。
 北倉に見限られ(半ばこちらから見限ったようなものですが)身一つになった伴蔵の熾烈な攻撃を受けて立つのは秘伝を全て身につけた佐助。己の持つ能力全てを出し切っての戦いが面白くならないわけがないのですが、この戦いの中にも(伴蔵の)キャラクターが出るのが面白い。

 佐助がクナイを得物にするのに対して、伴蔵がこの戦いで用いたのは太刀。これは忍者刀と言うべきものかもしれませんが、しかしむしろここは、彼が忍者ではなく武士の武器にこだわったものと感じられます。
 旗本に取り立てられることを条件に北倉に仕え、最後まで権力の側にあろうとした伴蔵(そしてそれは彼の祖父にまで遡る、やはり佐助の祖父とは対照的な在り方なのでしょう)が武士の武器を使うというのは、彼の存在を象徴するようではありませんか。

 しかし最後の最後の佐助の決め台詞とともに伴蔵が刀を折られた後はチェーンデスマッチからの泥まみれの肉弾戦と、文字通り泥臭い戦いが展開していくのもまたよろしい。
 ある意味本作の売りである体を張ったアクションを存分に楽しませていただきました。

 そしてその果てに佐助が到達した忍びとしての境地が語られることになります。それは、誰も殺さない、殺させないというもの――いや、牢人たち殺されてましたが、と意地悪を言うのは野暮でしょうか。


 何はともあれ、「猿飛三世」の物語はこれにて幕。佐助は、いや登場人物それぞれは皆新たな道に笑顔で踏み出し(一人仏頂面でデレる親父殿もいますがこれはこれで良し)、まずはめでたしめでたし、であります。

 正直なところ、全編を振り返ってみると、コメディをやりたいのか成長物語をやりたいのか面白忍者対決をやりたいのか、色々とブレていた感はあります(たぶんその全てをやりたかったのだとは思いますが)。
 その中でも、終盤、なかなかいい具合だった成長物語が最後の最後でアレっ? となってしまったのが個人的にはまことに残念ですが…まずは久々のTV忍者時代活劇を楽しませていただいたことに感謝しておくとしましょう。特にキャストのハマりっぷりは実に良かったのですから…



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 「猿飛三世」 第3回「風の巻」
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 「猿飛三世」 第5回「活の巻」
 「猿飛三世」 第6回「同の巻」
 「猿飛三世」 第7回「殺の巻」

関連サイト
 公式サイト

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