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2012.12.20

「陣星、翔ける」 痛快、陣借り平助三度の見参!

 義に拠って弱きを助け強きを挫く颯爽たる快男児、天下無双のいくさ人・魔羅賀平助の冒険を描いた三冊目の短編集であります。
 刃渡り四尺の大太刀と傘鎗を携え、愛馬・丹楓とともに気儘に戦国をさすらう「陣借り平助」、今回の冒険は…

 厳島、桶狭間、川中島――名だたる合戦に参加して大活躍し、かの剣豪将軍義輝から百万石に値すると評された魔羅賀平助。仕官を望まず、ただ腹一杯白米の飯を食えることだけを望みに弱い側につくという、あらゆる意味で破格の男です。

 本書に収録されたのは、そんな平助が活躍する5つのエピソードであります。

 平助を仇と狙う女忍・鵺から細川藤孝の妻子を助けた平助が、名刀・国綱を巡る騒動に巻き込まれる「鵺と麝香と鬼丸と」
 武田勝頼への輿入れを嫌がって逃げ出した信長の姪が引き起こす騒動を、意外な相手に陣借りした平助が捌く「死者への陣借り」
 駿府で女弁慶と異名を取る侠女、そして平助を仇と狙う今川の女大名に挟まれた平助の苦闘「女弁慶と女大名」
 里見の女忍の罠にはまった平助が、かつて愛し合った北条の遮那姫の娘を救うために必死の戦いを繰り広げる「勝鬨姫始末」
 かつて筒井家の奥方に受けた恩義を返すため筒井順慶に肩入れする盲人・木阿弥に陣借りした平助が知る男の心「木阿弥の夢」

 ご覧いただければおわかりの通り、どのエピソードも平助と戦国時代の有名人が絡む…だけでなく、事件の陰には女あり。
 そこには基本的に底抜けに女性には甘い――それは節度がない、ということでは全くありませんが――平助だけに…ということもあります。しかしそれだけでなく、様々なゲストヒロインを配することで、平助のように実際に武器を手にして戦う者だけではない、また別の視点から戦国という時代を描くことに、本作は成功していると感じます。
 そしてこの「いくさ人」以外の視点は、ヒロインたちだけではなく、例えば「木阿弥の夢」の木阿弥のような人物からも描かれており、ドラマに深みを与えているとも、また感じる次第。

 ただ少々残念なのは、本書の収録作に、実は合戦場面が少ない≒平助が陣借りする場面がかなり少ないことでしょうか。
 もちろん、平助が活躍するに足る合戦がそうそうあるわけではないのですが、この辺りは「陣借り平助」の活躍を楽しみにしていた身としては、少々残念ではあります。
(もっとも、それをある意味逆手にとったような「死者への陣借り」のような泣かせるエピソードもあるのですが)

 その一方でシリーズファンにとって注目なのは、シリーズ第1弾に収録された「勝鬨姫の槍」に登場した北条の女傑・遮那姫が登場する「勝鬨姫始末」でしょう。
 「…槍」のラストを受けて展開する本作は、姫との再会も嬉しいのですが、それ以上に、ある意味狂言回し的スタンスで物語に関わることが多い平助には珍しい、彼自身の存在にも大きく関わるストーリーであることが目を引きます。

 実は平助は、第1弾の時点でドラマ的・キャラ的にはある意味完結している存在なのですが、なるほど、彼自身を掘り下げるのにこういうやり方があったか…と感心した次第です。


 ちなみに「…始末」には、「…槍」に登場した風魔の子鬼が成長した姿で登場、平助を助けて活躍するのですが――細かい設定は失念してしまいましたが、年齢的に「彼」の親に当たるのでしょうか。
 本作に遠景として登場する足利義輝同様、こうして作者の別の作品の影が感じられるのも、また楽しいものであります。

「陣星、翔ける」(宮本昌孝 祥伝社) Amazon
陣星、翔ける


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