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2012.12.10

「スウォーズマン 女神伝説の章」(その二) 平穏は海の彼方に…?

 ツイ・ハークによる「笑傲江湖」の映画化の一つ、「スウォーズマン 女神伝説の章」の紹介、続きであります。

 さて、ネタ的な要素も非常に多い本作ですが、しかしそれで終わるわけではありません。
 登場するキャラクターの数々がひとたび動き出すと、凄まじく、そして素晴らしいアクションを見せてくれるのは、これはまず間違いなくアクション設計を担当した程小東の功績でしょう。

 程小東のアクションは、とにかく人が飛ぶ! 回る! そしてそんな中でも美しい女性描写が特徴かと思いますが、本作はその魅力がフル回転。このために女性になったのでは…と言いたくなる東方不敗はのみならず、任盈盈の華麗な鞭アクションも実に素晴らしい。
 もちろんアクションの見事さは女性だけではなく、ある意味東方不敗に匹敵する存在感で描かれる任我行の怪物っぷりといい、上述の通りネタっぽいのに格好良い服部といい、ほぼ全盛期のリー・リンチェイが演じるだけあって動きのキレが半端ない令狐冲といい、一人一人のキャラと密着したアクションは、ただただ見事の一言、であります。
(ちなみに任我行を演じたヤン・サイクーンは90年代前半の香港アクション映画で数々の怪物的悪役を演じた俳優ですが、任我行の常軌を逸した暴れっぷりはまさにこの人ならでは。とにかく馬鹿笑いしながら敵を吸収しまくる悪魔的姿には圧倒されるばかりです)

 そしてもちろん、このアクションもキャラも立ちまくった面々が物語の随所で激突するわけで、これが凄くないわけがない。クライマックスに五対一をものともせず暴れまくる東方不敗の姿は、これはアクション映画史上に残る…というのは言い過ぎかもしれませんが、私の心には一生残ります。


 しかし…今回久しぶりに、原作に相当忠実なドラマ版を見た後に見直してみて、考えさせられたことがあります。
 それは原作と全く異なる、本作のラストシーンに込められたもの…それであります。(ここから先は未見の方はご注意を)


 原作同様、東方不敗を倒して復権し、血で血を洗う粛正を開始する任我行。彼に従わない令狐冲もまた、粛正の標的とされることとなります。
 と、ここで盈盈は令狐冲と烏鴉嘴を日本に逃がし、自らは父の元に残ることとなります。彼女も連れて行こうとする令狐冲に「この琴であの歌(笑傲江湖)を一緒に弾くことはもうできない」という言葉とともに…

 正邪のイデオロギーを越えた和合(簫と琴の合奏曲「笑傲江湖」はその象徴)を描いた原作から考えれば、これはほとんど正反対の結末。上記の通り原作を大きく離れたアレンジがほどこされた本作ではありますが、これは人によっては改悪ととられてもおかしくない改変であります。

 その改変が何故なされたのか。そしてそもそも、原作では正派に対する異なるイデオロギーの勢力としてのみ描かれていた日月神教が、漢民族から見れば異民族である苗族の一団と描かれているのか。原作にない朝廷や日本といった勢力が顔を見せるのか――

 私はそこに本作が製作された1990年代前半香港の空気を見た思いがします。
 同じ民族が権力闘争の末に真っ二つに割れ(しかも片方は異民族と結び)、そこに和解は存在しない。巻き込まれた個人が平穏を得るには、ただ全てを捨てて海の向こうに行くしかない…(日本武士の姿を見れば、海の向こうに平穏があるかは悲観的になるのですが)

 もちろんこれは牽強付会に過ぎる見方かもしれません。しかし本作の監督であるツイ・ハークのこの時期の他の作品を考えれば、そして原作にある種政治的メッセージが強く込められていたことを思えば――

 海を隔てて恋人たちが引き裂かれる中、明るく希望を謳った主題歌が皮肉に流れるエンディングを見ながら、そう感じた次第です。


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