« 「宿神」第2巻 募り続ける想いの果てに | トップページ | 「浣花洗剣録」第13集/第14集 激突、青木堡対白水宮 »

2013.01.08

「麗島夢譚」第4巻 流転また流転の果てに

 江戸時代前期の麗島――台湾周辺を舞台に、生きていた天草四郎、松浦家の海賊青年・伊織、三浦按針の遺児の忍者・ミカの三人が破天荒な冒険を繰り広げてきた「麗島夢譚」もこの第4巻でついに完結。舞台を再び日本に移しての最後の一暴れであります。

 流されるまま、麗島を巡るスペインとオランダの争いに巻き込まれた伊織たち。その戦いにも敗れんとした時、現れた鄭芝竜の船に拾われるのですが――
 なんと鄭芝竜の狙いは天草四郎。若くして亡くなった(!)息子・鄭成功と瓜二つだった四郎(!!)を、彼は身代わりに立てようとしていたのであります。

 かくて、全く予想もつかなかった展開に伊織や、読者までもが仰天する中、舞台は日本に移るわけですが、まだまだ物語は先が読めません。
 鄭成功として生き始めた四郎の前に立ち塞がるのは、彼のある意味宿敵であり、そしてミカの主君たる松平伊豆守。既に四郎を、鄭成功に感情移入していたミカは、伊豆守に、そしてその配下の甲賀四鬼に挑むことになるのです。
(そして成り行きでそれに巻き込まれる伊織と麗島のカタガラン族の族長ヒメ)

 果たして四郎たちの運命は、そして何よりも物語の落ち着く先は…最終回まで転がり続ける先の予想がつかぬまま、こちらも最後まで引っ張られてしまった次第であります。


 正直なところ、最後まで主人公たちが流されるままだった印象は拭えない本作。

 特に伊織は物語の序盤で目的を見失い、それ以降は状況についていくのがやっとだった感があり、むしろ四郎と伊豆守との間の――感情と任務の間の――板挟みになる立場にあるミカの方が物語では主体的に動いていたと感じます(この辺り、作品の最後の最後でメタなツッコミが入っているのもむべなるかな)。

 ラストも、久々に登場したあの人物が、一種デウス・エクス・マキナ的に使われていて、うまくその場を収めたなあ…という印象は残ります。

 しかしそれでも本作を嫌いになれないのは、巻き込まれまくった彼らが、自分たちの境遇に流され、文句を言いながらも、しかしそれでもそれなりに懸命に生きる姿が描かれていたからであり――そこに何とはなしの共感を覚えてしまったから、でしょうか。
 そして現代において、鄭成功の名が麗島においてどのような意味を持つかを思えば、そこにある種の感動が生まれるというものでス。

 そして、その辺りには触れず、物語の視線はあくまでも登場人物のそれに留めて締めくくるのも、また本作に相応しい結末であったと感じるのですが…


「麗島夢譚」第4巻(安彦良和 徳間書店リュウコミックス) Amazon
麗島夢譚 4 (リュウコミックス)


関連記事
 「麗島夢譚」第1巻 大活劇、麗しの島!
 「麗島夢譚」第2巻 武蔵と伊織の間に
 「麗島夢譚」第3巻

|

« 「宿神」第2巻 募り続ける想いの果てに | トップページ | 「浣花洗剣録」第13集/第14集 激突、青木堡対白水宮 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/56433288

この記事へのトラックバック一覧です: 「麗島夢譚」第4巻 流転また流転の果てに:

« 「宿神」第2巻 募り続ける想いの果てに | トップページ | 「浣花洗剣録」第13集/第14集 激突、青木堡対白水宮 »