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2013.01.20

「天下一!!」第5巻 リア充パワーは歴史を変えるか!?

 戦国時代にタイムスリップした女子高生・武井虎が、現代に戻るために悪戦苦闘を繰り広げる「天下一!!」もいよいよ佳境。運命の天正10年を舞台に、歴史を変えるための虎の奮闘は続くのですが…

 時の抜け穴に落ち込んで、戦国時代にタイムスリップしてしまった虎。何とか織田信長の小姓となって、それなりに楽しい(?)戦国ライフを送っていた彼女は、ついに同僚であり、憧れの人である森乱こと森蘭丸と結ばれるのですが…

 しかし、時間を司ると思しき謎のウサギ男から虎に与えられた元の時代に変える条件は、歴史を変え、信長を本能寺で生き延びさせるということ。
 かくて、蘭丸にも打ち明けられぬ秘密を胸に、虎は孤独な戦いを繰り広げることと相成ります。

 さて、本能寺の変を防ぐには、下手人たる明智光秀が信長を襲わなければよい=二人が仲違いしなければよい。
 巷説には、家康の接待役を任せられながらも、悪臭のする魚を饗したことが信長の逆鱗に触れたという説がありますが、それならば…と、この巻では、光秀の補佐役となった虎が、何とか接待を成功させようと奮闘する姿が描かれます。

 これまで同様、いかにも現代っ子らしい物怖じのなさと突拍子もないひらめきで事態を切り開いていく虎の姿を描く本作ですが、それと並行して描かれる、本作ならではの信長解釈もまた、相変わらず魅力的です。

 この巻では、フロイスが記した、安土城内に信長が自分の代わりに大石を御神体として安置し、人に崇めさせたというエピソードが登場いたします。
 信長を扱った作品では必ずといってよいほど描かれる、有名な逸話ですが、諸説ある信長の行動の動機について、本作ならではの、しかし十分に魅力的かつ説得力ある理由を提示しているのが――信長に対する好意的な解釈に過ぎるかもしれませんが――実に楽しい。
 そしてフロイスの懸念に対する虎発案の解決策も、思わず脱力、しかし納得の内容、そして信長と小姓たちとの絆を感じさせて、本作らしい楽しさに満ちているのは言うまでもありません。
(そして信長と小姓たちとの絆と言えば、この巻のラストに描かれるエピソードがまた実に良いのであります)


 そんなこんなで、何とか光秀につつがなく接待役をこなさせた虎ですが、しかし残念ながらこの辺りは歴史の枝葉。記録次第でいかようにもなりそうな部分ではあります。そもそも、本能時の変の原因自体、現代においても諸説紛々なのですから…

 そしてそれと並行して虎の身に起きる大事件。なるほど、前の巻でああなったらこうなる可能性はあるわけですし、ある意味少女漫画では定番(というのは言い過ぎかしら)の事件ではありますが、しかしここでこんなことになるか!? と大いにやきもきさせられる展開であります。

 しかし、これでいよいよ虎と蘭丸の仲が深まったことは事実。果たしてリア充パワーで本能寺の変を回避することはできるのか? しかし、変えて現代に帰れることになっても、蘭丸との別れになるわけで、果たして虎はどのような道を選ぶのか?
 おそらくは次でラストになるのではないかと思いますが、本作らしい明るい笑顔の結末は…難しいですかね、やはり。


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