「妻は、くノ一」(漫画版) ちょっと意外なアレンジの漫画版連載開始
隔月刊のペースで順調に号を重ねてはやVol.4の「サムライエース」誌。これまでなかなかこのブログで取り上げる機会のなかった同誌ですが、今号から風野真知雄の「妻は、くノ一」が漫画化と聞いては黙ってはいられません。さっそくチェックした次第です。
天文マニアで周囲からは変わり者扱いされていた平戸藩士・雙星彦馬と、彼のもとに嫁入りして深く愛し合いながらも一ヶ月で姿を消した美しい妻・織江。
隠居して江戸に出て織江を探し始めた彦馬は、やがて彼女が実は平戸藩を探索しにきたくノ一であったことを知るのですが…
角川文庫から全10巻で刊行された原作については、これまでこのブログでも取り上げてきましたが、推理あり恋あり活劇ありと、実に作者らしい作品。
ご存じの方も多いかとは思いますが、4月からBSプレミアムで市川染五郎と瀧本美織主演でドラマ化が予定されているところ、今回の漫画化もそれを踏まえてのものでしょう。
その漫画版は、今回一挙2話70ページ収録という形なのですが、少々驚かされたのは、漫画版が、彦馬が既に江戸に来ている状況からスタートする点であります。
原作で言えば、第1巻「妻は、くノ一」の第4話「妻恋坂」と第5話「月は知っている」を漫画化した形となるのですが、冒頭の彦馬と織江の出会いと別れをカットしたのは、なかなか大胆なアレンジかと思います。
しかし原作の大半を占める江戸での物語を最初から描くことで、本作の基本スタイル――すなわち、彦馬を中心とした推理ものパートと、織江を中心とした活劇ものパートの組み合わせ――を提示する形となっているのは、なかなかうまいアレンジと感じます。
(もちろん、連載全体のページ数という制約ものもあるかとは思いますが…)
特に今回描かれた2つのエピソードは、いわゆる時代劇ヒーローとは少々…いやだいぶ異なる彦馬のキャラクター――子供と同じ目線で考え語りかけることができること、そして何よりも天文学の造詣が深いこと――が良く表れており、主人公の紹介篇としても良くできていると感じるのです。
なお、この漫画版の作画を担当しているのは黒百合姫。時代もの絡みでは「幕末恋華・新選組」の漫画版を担当されている方のようですが、作画・演出ともになかなか達者に感じます。
特に印象に残ったのは、御庭番頭の前では冷静な横顔を見せていた織江が、平戸藩江戸屋敷を探る役目を与えられて頭を下げた時、周囲から見えないところで柔らかな笑顔を見せるシーンであります。
くノ一としての顔、夫を愛する女性としての顔、二つの全く異なる顔を持つ織江のキャラクターを一瞬で描き出した、素晴らしいシーンと感じます。
今回の漫画版が果たして原作のどこまでを描くのかはわかりませんが、しかし原作ファンとしても先が楽しみであることは間違いありません。
ただ今は、原作第1巻のラストの松浦静山のセリフで締められたラストページを見て、原作初見時の衝撃と(これから何を描いてくれるのだろうという)喜びをありありと思い出したところなのです。
「妻は、くノ一」(黒百合姫&風野真知雄 角川書店「サムライエース」Vol.4掲載) Amazon
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