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2013.02.11

「江戸天魔録 春と神」第1巻 襲来、天魔天一坊

 二丁拳銃を相棒に無頼の生活を送る少年・神寄。彼には、父にはめられた醜い首輪によって周囲から鬼子と忌み嫌われてきた過去があった。母を捨てた父への復讐のため、江戸に足を踏み入れた神寄を襲う謎の妖魔「天一坊」。その超常の力に追い詰められた神寄の前に、乙春と名乗る剣士が現れた…

 このブログ的には「あっけら貫刃帖」の作者として記憶に残る小林ゆきの最新作は、(再び)徳川吉宗の時代を舞台とした伝奇活劇であります。

 本作の主人公は、幼い頃から、奇怪な目のようなものが浮かぶ首輪をつけて育てられた少年・神寄。
 決して外れぬその首輪のためもあってか周囲からは鬼子と呼ばれ、母も失った彼は、今は二丁拳銃を頼りに諸国を放浪する無頼の渡世を送っております。

 そんな神寄の目的は、彼に首輪をはめ、そして母を捨てた父への復讐。かつて母が江戸城に上がっていたことだけを頼りに、江戸を訪れた神寄ですが――
 彼の前に現れたのは、翼を持った奇怪な怪物。刀も銃も効かぬ不死身の肉体を持ち、彼の首輪を狙うその怪物に神寄が手も足も出ず追い詰められた時、現れたのは、首輪と同じ簪紋を首に浮かべた謎の男・乙春。

 常人離れした力を発揮した乙春は、刀一本で怪物を粉砕、自分は神寄を守る者だと告げるのですが…


 と、少年が拳銃をぶっ放し、西洋の天使とも悪魔ともつかぬ妖魔が暴れ回り、謎の剣士が哄笑しながら妖魔を叩き斬る…ノリ的には伝奇時代劇というより、時代ファンタジーといった印象の本作。
 個人的には苦手なタイプの作品ではありますが、しかしそれでもおっ、と思わされるのは、神寄を襲う謎の妖魔(たち)が、「天一坊」と呼ばれている点であります。

 天一坊とくれば、言うまでもなく徳川吉宗の御落胤と称して世間を騒がせ、獄門となった人物。落胤としての真偽なども含めて、この時代を描いた作品ではしばしば題材となるキャラクターです(さらに言えば、「あっけら貫刃帖」のラストで登場が予告された存在でもあります)。
 その天一坊を、古くから江戸を狙う謎の妖魔たちの名として設定するというのは、実にそそられるではありませんか。

 正直なところ、この第1巻の時点ではキャラ設定にも物語にも謎の部分が多すぎて、なかなか判断のし難い作品ではあります。神寄と乙春のキャラクターも、現時点では魅力的とは思えません。
 それでも、(おそらくは)主人公の味方として小川笙船が登場するなど、意外な輝きを見せる本作からは、まだ目を離せそうにありません。

 プロローグを過ぎて、物語が本格的に動き出すであろう次の巻を待ちたいと思います。

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