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2013.02.09

「青葉耀く」上巻 波瀾だらけの学園生活の行方は?

 生まれてこの方、僻村に暮らしてきた大月寅之助と矢島小太郎。虚弱体質だが秀才の小太郎と、力自慢だが勉強はからっきしの寅之助は、ともに城下町に出来たばかりの藩校への入学を許されて親元を離れることになる。そんな彼らの前に、何故か二人の出生を探る二人組の美少女・鈴と京が現れるのだが…

 最近は伝奇テイストは控えめなものの、相変わらず、ユーモラスで、しかし時にピリッと辛い時代小説を発表し続けている米村圭伍が、さる藩の藩校を舞台に描く青春活劇(?)です。

 舞台となるのは出雲国千歳藩(作者の「ひやめし冬馬四季綴」にちらりと登場する藩であります)、主人公となるのは、大月寅之助と矢島小太郎の二人の少年であります。

 父が郷蔵の差配役だったため、城下町から遠く離れた僻村で暮らしてきた二人は、寅之助は腕自慢のガキ大将、小太郎は虚弱体質の秀才と全く正反対ながら、しかし生まれた時から兄弟同然に育ってきた間柄。
 本作は、出来たばかりの藩校・敬恩館に通うこととなった二人が、そこで繰り広げるユーモラスでちょっとほろ苦い騒動を描くお話かな? と思いきや、物語は意外な方向に展開していくこととなります。

 紆余曲折(家老の子ばかり良いものを食ってその分貧しいものを食わされるとか、寅之助がしょっちゅう授業をサボって小太郎に絞られるとか)を経つつも、何とか学園生活を送っていた二人の少年の前に現れた二人の美少女。
 一人は、藩校の仮寮の持ち主である呉服屋の鳴海屋の娘・お鈴。もう一人は、町道場のマドンナで弓の名手・夏巻京。この二人が、寅之助と小太郎に何やら興味を抱いているようなのですが…

 と、ここで(シモネタを絡めた)恋愛話に行くかと思えばさにあらず。
 実はお鈴と京は、陰謀に巻き込まれて命を奪われた藩主の娘・双葉姫の学友。姫に生き別れの弟――すなわち藩主の御落胤!――がいることを知った二人は、姫の遺志を果たすため、「河童組」なる秘密結社(?)を結成、弟君を探していたのです。
 そう、本作の中心となるのは、実にこの藩主の御落胤探しなのであります。


 体質的には姫と瓜二つ(?)の小太郎なのか、母親が奥勤めだった寅之助なのか、はたまた全く別の第三者なのか…
 その謎に挑むのがいわば少女探偵とも言える河童組のヒロイン二人なのですが、話を大いに面白くしているのは、何と言っても、そもそも寅之助と小太郎自身が、御落胤の存在を知らず、河童組の二人も自分たちが誰を探しているのかを伏せている点でありましょう。

 姫が暗殺されるほどの陰謀が進行している藩内。そこで御落胤、それも男子が新たに現れたならばどうなるか。
 そしてそもそも何故御落胤がその身分を伏せて育てられたか、それを考えれば、彼女たちの行動の理由もわかりますが、しかし聡いと言ってもまだ十代の女の子の考え。色々なところで穴があるのが、また話をややこしくしてくれるのです。

 そしてもう一つ面白いのは、この騒動の舞台が――出入りは結構自由とはいえ――藩校、学校という一種の閉鎖環境である点でしょう。
 基本的に物語が展開していくのは藩校の中、すなわち敵も味方も同じ場所で顔をつきあわせることとなるわけであります。
 そこに先に述べた、「誰を探しているかを言うことができない、本人たちも自分たちが対象であることを知らない人探し」が絡んでくるのですからややこしくなるのは必定ではありませんか。

 この上巻のラストでは、城下に出てきた寅之助の父が、我が子(?)と河童組の二人を前に、いよいよ重い口を開くという、何とも気を持たせる場面で終わるのですが、はてさて真実はどこにあるのか、そして四人の少年少女の友情と恋の行方は…
 というわけで、早々に下巻も読まなければ気になって仕方がないのであります。


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青葉耀く 敬恩館風雲録(上)

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