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2013.02.02

「魔界転生 地獄篇・第二歌」 転生衆の猛威と殺人剣の行方

 今から約15年前に発表された幻のオリジナルビデオアニメ版「魔界転生」の第2巻、地獄変第二歌の紹介であります。
 島原の乱を舞台とし、全編ほぼオリジナルであった第一歌に対し、今回は比較的原作に沿った内容ではあるのですが――

 第一歌での死闘が嘘のように穏やかな日々を柳生の里で送る柳生十兵衛。門弟たちや、賑やかなお縫・弥太郎姉弟、しとやかなお雛たちと、それなりに楽しく暮らす十兵衛の脳裏には、しかしこれまで送ってきた血塗られた人生の記憶が…

 一方、江戸の由井正雪の屋敷では、僧形の巨漢が乙女を弄んだ後に引き裂くという惨劇が繰り広げられ、屋敷を探っていた柳生の忍びたちは、一人の怪剣士の奇っ怪な技により、一人を残して全滅。
 その忍びの報告を聞いた柳生宗矩も、病に冒されて余命幾ばくもない状態となっておりました。

 そして十兵衛が沢庵和尚のもとを訪れて島原での天草四郎との対決の模様を語っていた頃、江戸ではその四郎が魔界転生により奇怪な再誕を遂げ、それを言祝ぐように、四郎と三人の転生衆は夏祭りの場を襲い、たちまちのうちに屍の山を築きあげて――


 という第二歌の展開・シチュエーション自体は、冒頭で述べたとおり、原作とある程度合致したものとなっています。
 柳生で弟子たちとともにのんびりと暮らす十兵衛(そしてそこに紀州頼宣の命で娘を連れにやってくる関口弥太郎)、江戸で暗躍する正雪とそれを探る宗矩等々…

 その意味では、十兵衛が面白忍者たちとともに島原城に突入して、凄まじいサイキック能力を発揮する四郎と激突する第一歌に比べると、おとなしめの内容に思えるかもしれません。

 確かに、十兵衛のアクションもほとんどないのですが、その代わりに(?)大暴れするのは今回から登場する三人の転生衆――宝蔵院胤舜・荒木又右衛門・田宮坊太郎。
 ビジュアル的には比較的真っ当なデザインながら、その行動はまさに魔人。彼らが一片の容赦もなく弱き者たちにその規格外の力を振るい、次々と犠牲者を増やしていく描写、原作のイメージを踏まえつつもアニメらしいパワーアップの仕方ではないかと感じます。
(ちなみにビジュアルといい女性に襲いかかるところといい鎌ホークブーメランといい、胤舜には「獣兵衛忍風帖」の香りが…)

 と、その中でもパワーアップしすぎた感のあるのが荒木又右衛門。演じるのが若本規夫という時点で既に危険な香りですが、初登場シーンから、血の臭いに餓えるあまり、自分自身の手にグサグサと刃を突き立てているという狂人ぶりであります。
 そして正雪屋敷に潜入した忍びたちを追った又右衛門は、彼らの思わぬ反撃を受けてその身に無数の刃を突き立てられるのですが――その身からこぼれた腸が、忍びたちに襲いかかる!

 この辺り、若本規夫の怪演あり、まさかの忍法足三本(と劇中で呼ばれるわけではもちろんありませんが)あり、BGMが「ジャイアントロボ 地球が静止する日」で十傑衆が梁山泊を襲撃するシーンの流用だったりとある意味最高の盛り上がりで、OVA「魔界転生」屈指の名シーンというのは言い過ぎかもしれませんが、まず最もインパクトのあるシーンでありましょう。


 ここにラストで転生する天草四郎、そしておそらくは柳生宗矩と宮本武蔵が加わる(如雲斎は…)敵の陣容に、いかに十兵衛が立ち向かうのか!? …という期待は、もはやかなうことはありますまい。

 本作ならではのド派手なアクションと、豪快なストーリーのアレンジはもちろん惜しいのですが、個人的には原作とは大きく異なるキャラクター造形の十兵衛の想いの行方が、何よりも気になるのです。
 己の剣の道に踏み込むあまり、結果として殺人剣を振るうこととなった十兵衛が、その極地とも言うべき転生衆と戦う中で何を想うのか――それはおそらく、剣豪という滅び行く者たちがいかに生きるべきか、生きるべきであったのか、という問いかけへの答えにもなったであろうと思われるだけに、残念でならないのです。


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コメント

第一話がスピードある展開だっただけに、この巻は大人しい印象がありますね。田宮坊太郎の塩沢兼人さんや関口柔心の青野武さんは故人なだけに完結は無理でしょうが、別の形でのアニメ版の魔界転生を見てみたいものです(「十 忍法魔界転生」のアニメ化とか・・・)。

投稿: ジャラル | 2013.02.03 19:42

ジャラル様:
本文にも書きましたが、比較的原作に近い展開でしたからね>大人しい印象
やはりこの作品ならではの転生衆との戦いも見たかったですねえ…

投稿: 三田主水 | 2013.02.04 00:53

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