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2013.03.23

「アダンダイ 妖怪絵師録花錦絵」第2巻 もう一人の妖怪絵師、その名は…

 三浦屋八右衛門=若き日の葛飾北斎が、大妖怪・白澤とともに百物語を描くために繰り広げる冒険を描く「アダンダイ 妖怪絵師録花錦絵」の第2巻にして最終巻であります。
 妖怪を求めて旅する八右衛門の前に現れた、もう一人の妖怪絵師とは…

 弟子のお沢とともに諸国を放浪し、奇怪な噂の立つところに現れては、首を突っ込む傲岸不遜な男・八右衛門。彼の目的は、事件の背後に潜む妖怪たちと対面し、その姿を自らの手で描くことにあります。
 実は、普段こきつかっているお沢の中に眠るのは、全ての妖怪に精通するという中国の神獣・白澤。人々の間から妖怪たちの記憶が薄れ、忘れ去られていく――すなわち、存在が消えていくことを憂いた白澤は、天才絵師たる八右衛門に目をつけ、彼の画の中に、妖怪たちの存在を留めようとしたのです。

 この世のものならぬ妖怪を描き、己の名を天下に響かせたい八右衛門と、妖怪たちの姿を、存在を後世に残したい白澤。二人(?)の利害が一致して、百物語を描くための旅が始まったのですが――

 この第2巻で描かれるのは、その八右衛門と白澤の出会い、そして、百物語を描こうとするもう一人の妖怪絵師との対決であります。
 かつて勝川春章の門下に学びながらその下を飛び出し、町中で道行く人々を写生することで腕を磨いていた八右衛門。そんなある日、どうしても満足のいく画が描けない少女が、彼の前に現れます。
 絵師として、物事の本質を、人間の魂をも見抜く力を持つ八右衛門の目。その彼をして、魂の在処がわからない少女との出会いをきっかけに、彼は妖怪の存在を知り、百物語を描くために旅立つのですが――しかしその前に、百物語を描かんとするもう一組の妖怪と絵師が出現します。

 百物語の依頼者とも言うべき僧形の男――その正体はやはり神獣の獏。そして八右衛門も驚くほどの腕で百物語を描く女絵師。その名は東洲斎写楽!
 いやはや、まさかここで写楽が登場するとは…

 なるほど、写楽と北斎の活動時期はほぼ重なる――というより、写楽北斎説もあったくらいで――わけで、この対面は決してあり得ないことではありません。
 その絵師としての腕についても言うまでもありませんが、やはりここで写楽が選ばれたのは、未だにその正体には謎が多いゆえでありましょう。

 などと考えるまでもなく、北斎と写楽が妖怪画で対決というのは面白い(もっとも、ネームバリューこそあるものの、写楽の妖怪画というのはぴんとこない、というのは正直ありますが…)
 八右衛門も知らなかった白澤の真意も明かされ、絵師と絵師、絵師と妖怪、妖怪と妖怪の思惑が絡み合ったクライマックスは、それなりに盛り上がるところであります。


 …ただし、やはり残念なのは、そのクライマックスに至るまでの物語が――必要最小限なものは描かれているものの――やはり短すぎることでありましょう。
 もう一人の妖怪絵師との実力と、彼女との対決。北斎と写楽の方向性の違い。八右衛門と白澤のすれ違い。そしてその間に立つ妖怪たち…
 せめてあと一巻あれば、この辺りを掘り下げて物語を盛り上げることができたのでは、というのは、今さら言っても仕方ないことでしょう。

 しかしながら、北斎の百物語という魅力的なアイテム、そして妖怪たちのノアの方舟とも言うべき百物語の存在など、面白いアイディアはあっただけに、完全燃焼といかなかったのが残念に感じられるのです。


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