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2013.03.12

「陰陽師 瀧夜叉姫」第2巻 二人の武人、二人の顔

 夢枕獏の「陰陽師」シリーズ最大の長編「瀧夜叉姫」の、睦月ムンクによる漫画版の第2巻が発売されました。平将門の乱から20年後の京で起きる数々の怪事件に、おなじみ安倍晴明と源博雅が立ち向かうことになりますが、まだまだ物語はその全貌を見せることなく、謎めいた展開が続きます。

 この第2巻でメインとなるのは、前半が藤原秀郷=俵藤太の過去の物語、後半が平貞盛を襲った業病の謎と、奇しくもと言うべきか、かつて将門を討った二人の武将の物語であります。

 俵藤太と言えば、ある意味将門との戦い以上に有名なのは、三上山の大百足を退治したという伝説でしょう。
 近江に赴いた藤太が、瀬田の唐橋に横たわる大蛇を意に介さず跨いで通ったところ、大蛇の変じた美女が彼のもとを訪れ、琵琶湖の龍神の宿敵である大百足退治を依頼。それに応えた藤太は、三上山を七巻き半するほどの巨大な百足に矢で立ち向かい、百足の嫌うという人間の唾をつけた矢で、見事に討ち取り、龍神から宝を贈られた…という伝説であります。

 本作では、その伝説がほとんどそのまま取り入れられているのですが、何よりもここで印象に残るのは、このエピソードの主役たる俵藤太のビジュアルであります。
 名うての豪傑にして、しかし単なる猪武者でもない、人間力溢れる藤太の姿を、本作では見事にビジュアル化。その頑健な肉体と、何よりも不敵なその面構えは、まさに夢枕獏作品に登場する「太い」男そのもの。

 原作既読者にもかかわらず、おお、藤太とはこういう男だったのか! と今さらながらに感心してしまった次第であります。


 そして平貞盛の業病の方も、絵の力というものを感じさせてくれるエピソードです。
 貞盛の顔にできたという謎の瘡。先に蘆屋道満が治療に当たったにもかかわらず、手の打ちようがなかったそれに、今度は晴明が挑むこととなるのですが――
 いやはや、ついにその姿を露わにした瘡の描写が凄まじい。

 夢枕獏の作品には、人間の体がグロテスクに変化し、ほとんど別のモノに変じる様が描かれるものが少なくありませんが、今回描かれたそれは、その生々しさ、禍々しさを真っ正面から描ききり、見事に原作の、夢枕獏節とも言えるそれを再現したという印象があります。


 実は第1巻の感想で、この漫画版の(特にキャラクターの)絵柄について、ちょっとイメージと違う部分があるのではないか、と書いたのですが、それが早計に過ぎたと、私の目が曇っていたと、正直に認めます。

 物語の方はようやく本編に入ってきた印象というところ、この先展開していく物語を、どのように絵として、漫画として見せてくれるのか――改めて、今後の展開を楽しみに待ちたいと思います。


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