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2013.03.03

「無限の住人」第30巻 そして物語は終わり、旅は続く

 約20年に渡り連載されてきた(そしてこちらも読み続けてきた)「無限の住人」も、ついにこの第30巻で完結。幾重にも入り乱れた潰し合いの果てに辿り着いた結末は…

 那珂湊を舞台に繰り広げられる最後の死闘。万次、天津影久、乙橘槇絵、吐鉤群、偽一…いずれも最後まで残るに相応しい面々の最後の戦いは、思わぬ(?)乱入者もあって最後の最後まで油断ができません。
 斃れるのが、斃すのが惜しくなるようなキャラクターたちを、死闘の果てに容赦なく切り捨てていく――それは、この最終章を貫く一種のスタイルではありますが、最後の最後まで貫かれるそれは、いまさらながら作者の無情を恨みたくなるほど。

 また、本作の殺陣描写の素晴らしさは今さら言うまでもありませんが、力と力、技と技のぶつかり合いに留まらず、もはや気力と気力のぶつかり合いの域まで達した死闘を描ききった、まさに入魂としか言いようのないレベルであります。


 そして死闘の末に、最後まで残った二人。ある意味残るべくして残った二人の戦いの果てに何が残ったか――それを一言で言うのは当然ながら難しいことではありますが、何も得なかった、あるいはあるものを失い、あるものを得た…そうとしか言いようのないように思えます。

 しかしそれは、最後まで残った者だけに当てはまるものではなく、おそらくは逸刀流を巡るこの戦いに関わった全ての人に言えるのでありましょう。
 それを虚しいと見るか、潔いと見るか…人それぞれではありましょうが、最終話の後半で描かれた過去を振り返っての万次の言葉は、一見ひどいオチのように見えつつも、それ自体が一つの救いと感じてしまうのは、こちらの単なる感傷ではないと思いたいところであります。

 正直なところ、この最終話の後半自体は、こちらの予想の範囲内ではあり、おそらくは作者も相当早い段階で構想していたのではないか(…というのはいささか意地悪な見方かもしれませんが)と思うのですが、この万次の言葉には、素直にやられた! と感じた次第であります。


 本作については、ほぼリアルタイムで連載を追って読んできました。はっきりと申し上げて、不死力解明編の前半など読むのが辛い部分もありました(その分、後半の爆発は素晴らしいものがありましたが)。
 もちろん、長期連載漫画に紆余曲折があるのは当然のこと。総じて見れば、本作が時代漫画史上に残る作品であることは、間違いありますまい。

 万次の旅は終わりませんが、作品は終わります。その終わりが、小さな希望の灯を感じさせるものであったことに感謝しつつ…


「無限の住人」第30巻(沙村広明 講談社アフタヌーンKC) Amazon
無限の住人(30) <完> (アフタヌーンKC)


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